研究課題/領域番号 |
17K18425
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
市橋 保之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波応用総合研究室, 主任研究員 (80593532)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ホログラフィ / 専用計算機 / 波面印刷技術 / 立体映像技術 / コンピュータグラフィックス |
研究実績の概要 |
波面印刷技術を用いたホログラムプリンタではホログラムデータの情報量が膨大なため、スーパーコンピュータ等を利用し、大規模な並列処理でデータを作成してきた。しかし大量のデータの作成、移動に時間がかかり実用化の大きな障害の1つとなっていた。そこで従来手法の様にスーパーコンピュータ等を利用し、大規模な並列処理でデータを作成するのではなく、ローカルで稼働する専用計算機システムにより、ホログラムプリンタが使う順に、インタラクションにホログラムデータを作成する手法について基本となる特許の出願を行った。具体的には光線情報を取得し、取得した光線情報を波面に変換し、変換した波面からホログラムデータをローカルでインタラクションに作成する手法である。ハードウェアの研究は一般的に完成までに時間がかかることから、基本となる特許をおさえることで研究の優位性の維持を行った。 また本研究はホログラフィック光学素子を用いたホログラムプロジェクションディスプレイのリアルタイム化にも貢献するものであり、ディスプレイへの応用としてホログラムデータの補正手法およびディスプレイの視域拡大手法について検討を行った。補正手法については、まずは簡単なモデルでシミュレーションを作成し、補正量についての基本的な検討を行った。また視域の拡大については、オフアクシス参照光を活用してホログラムから再生される直接光の挙動を観測し、原理確認を行った。これらの成果について研究会で発表を行った。また関連した招待講演で現在の取り組みについて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、波面印刷技術を用いたホログラムプリンタのための専用計算機システムを検討し、有効性を明らかにすることを目的としている。そのために、光線情報を波面情報に変換しホログラム面への伝搬を行う計算のハードウェア化の検討を中心に、以下の研究を段階的に進めている。最初にエミュレータを作成し、回路の動作をシミュレーションできる技術を確立する。次に開発用ボードへ実装するための、専用計算回路を最適に作成する技術を確立する。そして点光源モデルをベースとした専用計算回路と組み合わせるための回路設計技術の確立を目指す。 現段階では固定小数点で動作するエミュレータを作成、シミュレーションを行う技術を確立し、開発用ボードへ実装するための最適なパラメータ(bit数)の検討を行っている。最適なパラメータとして入力データや光線データ、波面データなどそれぞれの段階で検討が必要となる。またパラメータの検討にあたっては開発用のボードの仕様も踏まえた調整が必要になるため、本助成金の前倒し申請を行うと共に、開発用のボードを調達した。また最適なパラメータについてはホログラムデータのシミュレーションを行い、各データについて現在検討を進めており、おおむね予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
開発用ボードへ実装するための、専用計算回路を最適に作成する技術を確立するために、調整可能なパラメータを整理し、種々の条件の中で作成されるホログラムデータの品質が最もよくなるパラメータの決定を行う。またハードウェア記述言語(HDL)を用いた回路設計を行うために、光線波面変換部、伝搬計算部、階調処理部など個々のパーツを作成していく。また全体を制御するための状態遷移図について検討を行い、本研究の実現可能性について見通しをつけていく。 また本研究の応用としてポイントクラウドの3Dオブジェクトのための専用計算機との組み合わせや、ディスプレイとしての応用先についても基礎検討を進めることで、本課題終了時に実用化につながる筋道が立てられるように目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の推進に必要な開発用ボードの調達にあたって、当機構の調達ルールで入札を実施することとなり、また本調達の優先度が高いことから前倒し申請を行って入札の実施に十分な予算を確保した。その結果差額として次年度使用額が発生した。この次年度使用額は本来次年度に使う分も含まれており、計画通り調達を進めて行く予定。
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