研究課題/領域番号 |
17K18426
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
大庭 雅道 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (40466660)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 気候変動 / アンサンブル予報 / 予測可能性 / 気候背景場 / 風力発電 / 気象パターン |
研究実績の概要 |
現在、中長期気象気候情報の精度向上と活用の観点から、各予報機関の予報結果を収集したデータベースが構築され、複数モデルによる予報の精度・不確実性に関する研究が推進されている。このプロジェクト研究の最終目的は、より長期の予報技術のスキルと理解を高めていくことにある。本研究では、これらマルチモデルアンサンブルによる過去の予報データの解析と、大気モデルを用いた感度実験を介して、日本域を中心としたアジアモンスーン域における「予報好機の窓」を同定するとともに、ENSOやインド洋ダイポールモード、北極振動といった代表的な気候変動モード(大規模大気海洋現象)が中長期予報の不確実性・精度へ与える影響を明らかにすることを目標とする。 この目的を達成するため、本年度はアジア域の春季、夏季、秋季、冬季における週間予報の予測可能性の初期値依存性を調査した。5つの予報センターにおける週間予報データ初期値の海面更正気圧に対し、自己組織化マップによる気象場分類を適用することで、予報精度の高い初期気象場の検出を試みた。その結果、統計的に週間予報精度の高い初期気象場パターンを複数特定することができ、予測可能性が気象の初期場に大きく依存していることを示した。また、これらの気象パターンの発生数と予報精度の年々変動に関係性を見出すことができた。 次年度以降、再生可能エネルギーの出力変動・予測精度に対しても分析を実施するため、過去の気象予報データを用いて日本域(関東・東北・北海道)の風力発電量のハインドキャスト予報実験を実施した。今後、気候変動モードによる背景場の変化が再生可能エネルギーの予測の信頼性にどの程度影響を与えるか定量的に把握していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予測精度の気象場依存性の調査と風力発電量ハインドキャスト計算は当初の予定通り行われたが、データ整備とその解析に予定よりも時間を要したため、論文作成に至らなかった。しかしながら、当初考えていた通り、気象の初期場と予報精度・予報可能性の関連性とその年々変動に対する依存性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた成果の説明性を高めるため、当初の計画通り代表的な気候変動モード(エルニーニョ南方振動・北極振動・インド洋ダイポールなど)と気象場の予測精度の関係について調査を実施する。分析結果の進捗によっては、その関連性を検証するため、気象予報モデルを使用した数値実験も実施する予定である。変動モードに関連した海面水温偏差・気候背景場を初期値強制した理想化したモデルの感度実験を行い、予報の不確実性が受ける影響をパーフェクトモデル実験により把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費・学会参加費が想定していたより安く実施できたため。 次年度以降、英語論文の校正費用などに充てる計画である。
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