研究課題/領域番号 |
17K18431
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
古市 尚基 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産工学研究所, 研究員 (70588243)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マウンド礁 / 内部波 / 乱流 / 粒子 / LES |
研究実績の概要 |
「人工マウンド礁(人工海底山脈とも呼ばれる、以下マウンド礁)」は、海底上に石材やブロックを山脈状に積上げ造成された構造物であり、国・都道府県によってその設置が進められてきた。マウンド礁と海洋内の背景流れ場との相互作用によって内部波(密度成層場を伝播する波動現象)が励起されると考えられており、夏季の表層栄養塩類が枯渇する環境下においては、この内部波の伝播・砕波から生じる乱流混合によって栄養塩類が底層から有光層へ供給され、一次生産量や有機物粒子(デトリタスなど)が増加し、局所的な流れ場の変化によって有機物粒子がマウンド礁近傍の海底に集積し、これらに起因するベントス増加、ひいては、水産資源の増大が期待されている。また、一次生産の増大や有機物粒子堆積による海洋内へのCO2固定の促進効果も指摘されている。マウンド礁設置によるこれらの効果を水産業の健全な発展や気候変動適応の視点から適切に評価していく上で、その背景物理機構としての内部波、乱流混合、粒子状物質の沈降・集積過程を解明することは必要不可欠な課題である。 これらの内部波・乱流・粒子輸送過程は、その時空間規模が小さい故に、海洋広域数値モデル研究のみに基づく取り組みでは実態解明が甚だ困難である。そこで本研究は、「人工マウンド礁近傍の水圏環境形成」に寄与する背景物理機構解明のため、マウンド礁と背景流の相互作用によって生じる内部波、乱流混合および粒子動態に関する「高解像度LES数値実験」を実施する。このようにして「海洋内の人工構造物・小規模海底地形近傍の局所的な流体・物質輸送」という海洋物理学・水産工学両分野が係る学際的課題にミクロな観点から挑戦し、基盤的知見を格段に進めていくことを目指す。 平成29年度(初年度)、「非静水圧LESモデル」の数値計算を実行するとともに、その手法の有効性を既往の水理模型実験結果との比較を通じて検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度、「非静水圧LESモデル」の数値計算を実行するとともに、その手法の有効性を既往の水理模型実験結果との比較を通じて検証した。当初計画では平成29年度に実施予定だったモデル検証のための新規の水理模型実験については、実験水槽使用のためのスケジュール調整が困難な見込みとなったため、次年度(平成30年度)に計画・該当予算を繰り越し、実施予定である。総合的に、初年度の主目的である数値手法の整備が順調に進んでいると考え、計画が(2)概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の計画で有効性を検証した数値モデルを用いて、マウンド礁近傍の内部波伝播や乱流混合の強度分布などの特性に関する複数のシナリオを考え、それらの再現実験を行う。このようにして得られた時々刻々の流速場、密度場の情報を用いて、様々な沈降速度や初期配置を仮定した粒子追跡の数値実験に取り組む。各シナリオにおける「内部波特性(伝播の有無など)」「境界層乱流混合の強度変化」と「粒子の沈降・集積過程およびその範囲」の関連性解明に重点を置きつつ、解析を進める。併せて、平成29年度に未実施だった水理模型実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では平成29年度に実施予定だったモデル検証のための新規の水理模型実験については、実験水槽使用のためのスケジュール調整が困難となった。次年度(平成30年度)に、計画・該当予算を繰り越し、実施予定である。あわせて平成30年度は、当初の計画通りの数値実験研究も実施予定であり、関連経費(物品費・旅費等)を使用予定である。
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