研究課題/領域番号 |
17K18432
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研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
大西 亘 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 学芸員 (00588270)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自然史標本 / 博物館資料データベース / 研究データ / 証拠資料 / 学術文献データベース / Cross Reference / Open Science |
研究実績の概要 |
“被引用”資料情報と対応する”引用元”研究成果情報の収集に着手し、計画の第1段階である(1)被引用資料情報を効率的に収集する手法について神奈川県で採集された植物標本を対象に調査を実施した。引用情報の収集確実性ごとに資料を区分し、段階的に収集にあたった結果、資料データ整備状況の違いとして予想された、資料固有ID(=資料番号)の付与の有無、収蔵機関の標本データベースへの登録の有無、標本データのweb公開の有無、web公開データのOpen Data化の有無は、主として各標本収蔵機関における資料整理状況に由来し、整備の進んだ一部の機関においてのみ、資料の引用状況に応じた資料データ整備が実施されていた。神奈川県立生命の星・地球博物館(KPM)および県内博物館に収蔵されている神奈川県産植物標本については、神奈川県植物誌調査会による「神奈川県植物誌 1988」、「同2001」のための調査により、そのほとんどがデータベース化されており、付与された資料固有のID(=資料番号)をもって一意に標本を指定可能な体制に整備されていることが把握されていたが、このような資料データの整備状況は、国内の標本収蔵機関全体を広く俯瞰した場合には、まれな状況と考えられることが明らかとなった。 同時に、研究計画の第2段階である、(2) 被引用情報を備えた資料データベースと研究成果情報データベースとの連携の仕組みの構築、について、(1)で得られた被引用資料情報を活用し、順次着手した。国内において既に広く普及し、今後の継続性も期待できる既存の学術文献情報データベースのシステムについて、学会や研究会、セミナー等の場を通じて運用主体となる機関の研究者、担当者に聞き取りを行い、被引用”資料情報と”引用”研究成果情報を結び付けるデータベース構築のために必要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は、“被引用”資料情報と”引用”研究成果情報の収集に着手し、計画の第1段階である(1)“被引用”資料情報を効率的に収集する手法についての調査を、ほぼ当初計画の想定通り実施することができた。同時に、研究計画の第2段階である、(2) 被引用情報を備えた資料データベースと研究成果情報データベースとの連携の仕組みの構築について、サンプルデータの整備を行った他、関連研究者への聞き取り調査を行うことができ、ほぼ当初計画の想定通り実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
“被引用”資料情報と”引用”研究成果情報の収集を継続して進めるとともに、この過程を通じて得られた、(1) “被引用”資料情報を効率的に収集する手法とその課題について体系的な整理を行う。(2)引用情報を備えた資料データベースと研究成果情報データベースとの連携の仕組みの構築についても、引き続き研究成果情報データベースに対して情報収集を行うとともに、収集した情報を参考として、それまでに得られた“被引用”資料情報と“引用”研究成果情報を使って、公開・発信可能な形でデータベースを構築する。さらに、計画の第3段階である (3) “被引用”資料情報を多様な利用者へ発信するための効率的な手法について実践的に調査を行う。学術成果情報同様に、専門家がインターネット等を通じて検索・閲覧できることはもちろん、より広い博物館利用者が活用しやすいよう、被引用資料情報の発信手法を工夫し、研究成果情報が視覚的に認知しやすくなることを主眼としたシステムの発信手法について、情報収集を行う。 構築した (2) 資料データベースと研究成果情報データベースとの連携の仕組み、および (3)“被引用”資料情報を多様な利用者へ発信するための効率的な手法についての情報を用いて、引用情報を備えた博物館収蔵資料データベースを、研究成果情報データベースと連携する形で、構築し、あわせて公開・発信を実施する。また、本研究課題による成果を発信するとともに、将来的にさらに多くの博物館収蔵資料情報について、その学術成果における引用情報との結びつきを相互に参照可能な形で発信する取り組みを広げるため、自然史博物館を中心とした、学芸員、博物館学や図書館情報学などの研究者らを交えたシンポジウムを開催し、有効な手法や課題について広く共有を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた調査旅行について、年度中に実施できなかったため。当該調査についてはH30年度中に実施を予定している。
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