平成31年度には、当初前年度中に実施予定であった、本研究の第3段階である“被引用”資料情報を多様な利用者へ発信するための効率的な手法について実践的な調査のうち、研究成果情報が視覚的に認知しやすい「引用研究成果-地理情報システム」のための情報収集をまず実施した。続いて、前年までに構築した「資料データベースと研究成果情報データベースとの連携の仕組み」および「“被引用”資料情報を多様な利用者へ発信するための効率的な手法」についての情報を用いて、引用情報を備えた博物館収蔵資料データベースを、研究成果情報データベースと連携する形で構築した。さらに、本研究課題による成果を発信するとともに、将来的にさらに多くの博物館収蔵資料情報について、その学術成果における引用情報との結びつきを相互に参照可能な形で発信する取り組みを広げるため、博物館学芸員、博物館学や図書館情報学などの研究者らとの情報交換の機会をもち、有効な手法や課題について広く共有を図った。 本研究における試行的なデータベース構築とその過程を通じた課題整理によって、次の成果が得られた。地方自然史博物館の収蔵資料情報や、資料に基づく地域自然史の研究成果情報を相互参照の形で結び付けて整理した。専門的な見地からの整理だけでなく、地理空間情報などの一般的な情報と結びつけることで、地方自然史博物館の収蔵資料情報や、資料に基づく地域自然史の研究成果情報が、専門家以外の博物館利用者や科学に関心を持つ市民によって広く利用される機会の創出を図った。博物館収蔵資料が具体的な研究成果との結びつきがあることを可視化し、また収蔵資料情報や研究成果情報へのアクセスを円滑にしたことによって、今後、広く社会における自然史情報の集積・発信拠点となる博物館の役割の再構築に貢献することが期待される。
|