研究課題/領域番号 |
17K18433
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
平原 将也 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 助教 (90609835)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光異性化 / ベシクル / 光反応 / 配位子置換反応 / 置換基効果 / 人工光合成 |
研究実績の概要 |
本課題ではプロトン還元および水の酸化反応において触媒活性を有し、かつ触媒活性が光異性化反応によって制御できるルテニウムアクア錯体に着目した。これらの錯体の側鎖に疎水性部位を導入し、両親媒性のルテニウムアクア錯体を合成する。さらに本錯体を用いて、多重膜ベシクルをプラットフォームとした水の光分解系の構築を試みる。 本年度はベシクルに導入するルテニウム錯体の分子設計を行う上で、二座配位子への置換基の導入位置の検討を行った。二座配位子の4位、4'位および6'位に置換基を導入したルテニウムアクア錯体を新規に合成し、単結晶X線構造解析により同定し、可視光照射下での光異性化の挙動を測定した。この結果、二座配位子の置換基の導入位置によって、光異性化の反応量子収率が一桁変わることを見出した。また、置換基を二座配位子の6'位に導入することにより、金属周りの配位構造がオクタヘドラル型からひずみ、光異性化と逆方向の熱的な異性化反応がおこることが分かった。以上のような挙動はDFT計算の結果ともよい一致を示し、光異性化および逆方向の熱的な異性化反応を可能にするためには金属中心の配位構造を歪んだオクタヘドラル型に設計することが重要であることが分かった。この結果はベシクル系をプラットフォームとした光反応系を構築する上で重要な結果である。 実際に二座配位子の6'位と三座配位子の4'位にアルキル鎖を導入したルテニウムアクア錯体を用いてベシクルを作製すると、室温での光照射によってベシクルの形態が変化し、その後暗所下で加温することによってベシクルの形状が復元することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はベシクルに組み込むルテニウム錯体の光異性化反応の検討を行った。ルテニウム錯体に組み込む最適なアルキル鎖の位置の検討行った。一方、両媒性ルテニウム錯体のプロトン還元および水の酸化触媒反応の評価までには至っていないため、次年度にこの評価を行いベシクルの構築を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は両親媒性のルテニウム錯体のプロトン還元および水の酸化触媒活性評価を行う予定である。具体的にはそれぞれの錯体を有機溶媒中に溶解させ、少量の水及びプロトン源を加えたうえで電気化学的に触媒活性を評価する。また、両親媒性のルテニウム錯体を用いてベシクルを作製し、酸化剤および還元剤を加えて触媒活性を評価する。またこれらの実験は可視光照射の前後で実験を行い、光異性化反応との相関を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は光源装置およびソフトウェアの購入を行った。計画ではキセノンランプおよび電気化学セルを購入予定であったが学内予算にて購入したため、本計画の直接経費で購入しなかった。これらの差額は平成30年度において試薬の購入および光学式酸素センサーの購入に充てたいと考えている。
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