エネルギー摂取と消費のバランス調節は、中枢と様々な末梢組織との密接なネットワークにより緻密に制御されており、それらの代謝恒常性調節の慢性的な乱れが肥満、肥満関連健康障害を誘起する。肥満症は病気であり、専門的治療を要するが、治療の中心となる体重コントロールに関しては食事指導、運動療法を中心とした生活習慣の改善以外に有効な治療法が確立されていない。近年は肥満と腸内細菌叢の変化に着目した研究が進んでおり、腸内細菌叢の異常(dysbiosis)が肥満の原因であるといわれている。本研究ではシンバイオティクス(プロバイオティクス、プレバイオティクス)の摂取が肥満症患者に与える効果について検討している。研究デザインは、プラセボ対照二重盲検並行群間試験とし、ビフィズス菌、乳糖果糖オリゴ糖、難消化性デキストリンで構成されるシンバイオティクス群およびプラセボ群を設定した。摂取期間3か月、経過観察3か月の計6か月の介入試験である。主要評価項目はBMI、副次的評価項目は体脂肪率、腸内細菌叢、内臓脂肪面積、血液パラメーター(脂質、血糖、インスリン、胆汁酸分画、総胆汁酸、アディポネクチン、レプチン、hsCRP、FGF-19)とした。対象者はbody mass index (BMI)が25-35kg/m2であり、その他研究計画書に定めたInclusion/exclusionクライテリアに従い、被験者リクルートを行った。盲検化の層別因子は性別、BMI(25-30および30-35)とした。これまでに60名を超えた被験者登録が可能であった。SAEは2例であり、ともに試験食品との因果関係は否定されている。現在フォローアップ期間中であり、データ集積中である。臨床研究センターによるモニタリングを行っており、順調に試験は進んでいる状況である。
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