研究課題/領域番号 |
17K18435
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研究機関 | 富山県衛生研究所 |
研究代表者 |
安川 和志 富山県衛生研究所, 化学部, 研究員 (00737835)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キャピラリー電気泳動 / 腸管出血性大腸菌 / マイクロチップ分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本における腸管出血性大腸菌による食中毒事例の多くを占める、大腸菌O26、O111、O157の理化学的な簡易分析法として、キャピラリー電気泳動法を基盤とする持ち運び可能な分析装置の開発を目指すものである。これまでにない、大腸菌株間の違いを電気泳動移動度の違いから判別し、一斉解析を可能とする。 平成28年度は、非病原性大腸菌株をモデルとして、細胞表面構造が似通った微生物同士の凝集による電気泳動移動度のずれや望まないシグナルの検出を改善するために、電気泳動緩衝液に添加するポリマー類等のスクリーニングを行った。しかしながら、実用上十分な分析精度と正確さを確保することはできなかった。そこで、大腸菌B株をモデルに増菌培養後の生きた株を直接化学的に修飾する方法を検討した。温和な条件下で第一級アミンの蛍光誘導体化が可能なオルトフタルアルデヒドとチオール化合物による反応を検討した。結果、未処理の大腸菌B株と比較して処理した株は、励起波長365 nmで蛍光を発し、かつキャピラリー電気泳動上で有意に電気泳動移動度に差があることを認めた。今後、化学修飾処理をした大腸菌B株の修飾部位の詳細について検討を行うと同時に他の大腸菌株の誘導体化による電気泳動移動度への影響についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していたサンプル調整や電気泳動緩衝液の検討のみでは、似通った大腸菌株間をキャピラリー電気泳動法で完全に分離することが困難であったため、計画を変更し、大腸菌の細胞表面に存在するアミノ基をターゲットに化学的に誘導体化し大腸菌間の凝集を改善する方法を実施しているが、反応条件の検討に多くの時間を有している。
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今後の研究の推進方策 |
オルトフタルアルデヒドとチオール化合物による大腸菌の蛍光誘導体化が可能であることが確認できたことから、構造の異なるチオール化合物を用いた大腸菌の誘導体化を行い、キャピラリー電気泳動上での電気泳動移動度の測定と、ゼータ電位の測定を実施する。さらに、誘導体化が大腸菌株間の凝集に与える影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画予算より減額されているため、マイクロッチプ分析機器作成における購入物品を一から検討し直している。結果、年度内に納品できない物品等があったため、翌年度予算と合わせてマイクロッチプ分析機器作成の物品購入費とする。
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