研究課題/領域番号 |
17K18438
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
小原 幸弘 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 運動器疾患研究部, 研究員 (50792214)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マクロファージ / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
本研究は、マクロファージが産生し、骨髄間質細胞株ST2細胞の走化性を刺激する分子を探索・同定し、その分子の生体内における骨代謝制御機構の解明を目的とする。 平成29年度の実施目標は、マクロファージ由来のST2細胞の走化性因子を精製しその機能を解析するため、①マクロファージ培養上清からST2細胞の走化性因子を分離・濃縮し、②SDS-PAGEで展開後、銀染色により得られたバンドを切り出し、LC-MS/MS解析を行い、因子の同定、③さらに同定したタンパク質についてin vitroの系にて機能解析を行うことである。 ①に関しては、マクロファージの培養上清500mLを、ST2細胞の走化活性を指標として陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いて、因子を分離・濃縮し、②において、精製画分を解析した結果、複数の因子が同定された。このうち、骨組織中に多く存在する細胞であるマクロファージ、骨芽細胞および破骨細胞のRNA発現解析から、マクロファージで高発現する因子を選別し、最終的にEmilin2に着目した。 ③in vitroの系にて機能解析を行った結果、Emilin2を強発現させた線維芽細胞株Ltk-細胞の培養上清はST2細胞の走化性を刺激し、リコンビナントEmilin2タンパクも同様にST2細胞の走化性を刺激した。また、新生仔マウス頭蓋冠由来間質細胞にEmilin2を強発現させたところ、骨芽細胞マーカー遺伝子であるRunx2とオステオカルシンの発現上昇および石灰化の亢進が認められた。従って、Emilin2はマクロファージが産生し、骨髄間質細胞の遊走と骨芽細胞への分化を促進することで、骨代謝を制御している可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のコンセプトは、マクロファージが産生する骨髄間質細胞の走化性因子の探索と機能の解明である。当該年度の目標は①因子の精製、②因子の同定および③in vitroにおける機能解析であり、マクロファージの培養液中からEmilin2を同定し、その機能がin vitroにおいて確認されたことから、おおむね計画通りであるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、Emilin2がin vivoでも骨代謝に関与する可能性があることから、Emilin2 KOマウスを作製して骨組織解析を行う予定である。既にCRISPR/Cas9法によって、一塩基欠損のファウンダーマウスを作製済みであり、KO Alleleがgermlineに乗っていることを確認している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗状況が概ね順調であったため、消耗品費の購入を予定よりも抑えられた。また、次年度にはマウスを用いた解析を計画しているため、多くの試薬を購入する必要性があるとともに、年度末に発注をした試薬類の納品が遅れたことにより研究費を繰り越す。
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