研究課題/領域番号 |
17K18438
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小原 幸弘 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (50792214)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マクロファージ / 骨芽細胞 / Emilin2 / 走化性 / 骨リモデリング |
研究実績の概要 |
マクロファージが骨芽細胞による骨形成を支持することが示唆されているが、その分子メカニズムについては不明である。本研究では、そのメカニズムを解明する過程でマクロファージの培養上清から、骨髄間質細胞株ST2の走化性を刺激する分子としてEmilin2を分離・同定することに成功した。さらにレトロウイルスベクターを用いて、マウス新生仔頭蓋冠由来骨芽細胞にEmilin2遺伝子を強発現させると、Runx2やOsteocalcinといった骨芽細胞分化マーカー遺伝子の発現上昇が認められ、石灰化が亢進したことから、Emilin2は骨芽細胞の分化を促進することが示唆された。骨髄間質細胞は骨芽細胞へと分化するだけでなく、脂肪細胞へと分化することも知られている。そこで、脂肪細胞前駆細胞株3T3-L1細胞にもEmilin2遺伝子を強発現させたところ、脂肪細胞分化マーカーであるAdipoq、Fabp4およびLpl遺伝子発現が低下し、脂肪滴形成も抑制された。したがって、Emilin2は骨髄間質細胞から脂肪細胞への分化を抑制しつつ、骨芽細胞への分化を促進していることが示唆された。マクロファージにIL-4を添加するとEmilin2 mRNA発現が上昇した。すなわち、組織修復型マクロファージでEmilin2発現が高いことが示唆された。抗Emilin2抗体を用いた骨組織の免疫組織染色では、Emilin2は骨芽細胞表面のキャノピー状の細胞で検出された。マクロファージマーカーであるF4/80との二重染色ではEmilin2を発現する細胞ではF4/80も検出されたことから、osteomacと呼ばれる骨組織常在型マクロファージがEmilin2を産生・分泌することで骨代謝を制御している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗が予定よりもやや遅れている理由としては、研究代表者が国立長寿医療研究センターから愛媛大学へ移動したことによる。しかしながら、本研究の第一目標としては、マクロファージが産生する骨髄間質細胞株ST2細胞の走化性を刺激する原因因子を同定することであり、その原因因子としてEmilin2を分離・同定することに成功している。また、Emilin2 KOマウスを国立長寿医療研究センターで作製済みであり、骨組織解析を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
In vitro の系でST2細胞におけるEmilin2の受容体を探索する。In vivoではEmilin2 KOマウスの骨組織解析を行う予定である。また、卵巣摘出による閉経後骨粗鬆症モデルマウスや骨欠損モデルマウスを用いて、Emilin2の臨床応用の可能性についても検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間中に研究代表者が国立長寿医療研究センターから愛媛大学へと移動したため、予定していた物品の購入を見合わせた。次年度には、移動先で新規に研究の準備を整えるため、多くの試薬や物品を購入する必要性があり、研究費を繰り越す。
|