Outbreak関連大腸菌O166:H15について、緬羊、馬、牛、兎脱繊維血液および鶏保存血液を用いてコンタクトヘモライシス試験を実施した。陽性対照として用いた赤痢菌と比較し、いずれの供試株においても溶血反応は確認されなかった。さらに、各供試株のTSB培養液の遠心沈査を用いて乳のみマウスによる感染実験を実施した。投与3時間後および6時間後においては、いずれの供試株についてもPBSと比較し有意な腸管内液体貯留活性は認められなかった。 5事例の患者由来O166:H15のうち4事例の株で同定された腸管凝集性大腸菌heat-stable enterotoxin 1 (EAST1)遺伝子(astA)と、本遺伝子にオーバーラップするIS1414 transposase遺伝子のアミノ酸配列比較を実施した。レファレンス配列と比較し、EAST1は97から100%、IS1414 transposaseは、96から98%の相同性であった。これらを発現解析するためのリアルタイムPCR法については、プライマーを設計した。また、対照とするハウスキーピング遺伝子(rrsA、hcaT、idnT、tus、cysG)については、インターカレーター法による定量性の高い検出系を確立した。本検討では、Outbreak関連大腸菌O166:H15について新規の病原因子は同定されず、これまでに報告されているEAST1が同定された唯一の病原因子となった。患者由来株では本遺伝子およびオーバーラップするIS1414 transposaseも高度に保持されていることから、これらの発現量と病原性の関連ついて、更なる詳細な検討が必要であると考えられた。 また、2019年8月にO166:H15を原因菌とする新たな食中毒事例が発生した。本事例の患者由来株を入手できたことから、今後ゲノム解析等を継続する予定である。
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