研究課題/領域番号 |
17K18442
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研究機関 | 兵庫県立人と自然の博物館 |
研究代表者 |
池田 忠広 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員(移行) (50508455)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 篠山層群 / 化石 / カエル類 / 分類 |
研究実績の概要 |
研究対象としている篠山層群産カエル類化石は現在1080点確認されており、内遊離骨化石は842点、その約5割について完全・一部の剖出が終了しており部位が特定されている。識別される部位は脛腓骨や大腿骨など四肢骨に関係するものが多く、分類形質を多呈す頭骨の一部や腸骨等は比較的少ない。今後も継続し剖出・部位の特定を行う。 当該年度は主として、化石標本の分類学的位置を明らかにするために、現生種を対象に各遊離骨における個体、雌雄間変異、また分類群間の相違の検討、また分類に有用な形質の特定を目的とし、①現生標本の採集・骨格標本の作製、②比較検討対象とする部位の特定に努めた。 ①については、当該研究者が在職する兵庫県三田市、また近接する篠山市、丹波市において、5~6月の繁殖期に複数の地点において調査し、トノサマガエルを132個体、ヌマガエルを33個体、シュレーゲルアオガエルを3個体、計169個体を採集した。当初計画のとおり、トノサマガエルの全標本について外形の撮影を行い、各部位(体長[SVL]など)について計測した。結果、最大個体(SVL)は78mm、最小で30mm、平均が42mmとなり、多くが40~45mmの体サイズを示す。これは同種の一般的な生体サイズより小さく、採集した多くの個体が亜生体の可能性が高い。したがって、生体サイズとされる10固体(雌8、雄2)について骨格標本を作成した。合わせて②関連する各部位を撮影した。 ②については、過去の文献等から記載対象としている部位を検証すると、腸骨や頭骨の一部、椎骨などが多く、分類形質の少ない長骨に関する記載は多くない。本研究では篠山層群産カエル類おける種多様性を可能な限り理解するために、前述した記載例の多い部位(腸骨、前頭頂骨、仙椎など)を検討すると同時に、記載例が少ない長骨(脛腓骨、大腿骨、上腕骨など)も対象に検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
篠山層群産カエル化石は千を超える標本が確認されており、その数は各年実施される調査により増え続けている。これらに関して、本年度に処理した数十標本を加え、全体の半数を超える標本については、完全または一部の剖出作業が終了しているが、他については剖出作業、また部位の特定が行われていない。今後も研究期間全体を通じ、同作業を実施し、研究対象とする標本の選別に努める。 当該年度では、30年度以降の研究に向け、現生種を対象に各遊離骨における個体、雌雄間変異、また分類群間の相違の検討、また分類に有用な形質の特定を目的として、現生標本の採集・骨格標本の作製に努めた。研究計画に沿い、所属する研究施設の周辺地においてトノサマガエルを中心に採集を行い、目標(100個体)を超える個体数(132個体)を採集することが出来た。しかしながら、研究実績の項でも述べたとおり、採集した標本多くはその体サイズが同種の生体個体の平均的体サイズより小さく、採集した多くの個体が亜生体と考えられる。また、採集した個体の処理方法が適切でなく、雌雄を判別する上で重要となる卵巣・精巣の判別が困難であった。各骨格部位の形質比較は生体個体間を前提にしているため、改めて生体標本を採集し、雌雄判別を容易とする標本管理に心がける必要がある。 また前述した現生種の資料収集に加え、一部の資料について骨格標本を作製し、30年度に予定していた各遊離骨が呈す形質の個体・雌雄間変異について検討を行った。結果、検討した資料は少ないものの、腸骨の背方稜前縁や寛骨臼縁、仙椎後球状顆や神経弓稜の形状において明確な個体・雌雄間変異が認められた。詳細については今年度引き続き検討する。 前項に述べた研究実績また、前述した進捗状況を考慮すると、本研究は一部につき30年度予定の研究項目にも着手しているが、全体を通じやや遅れが生じていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前述したとおり、篠山層群産カエル類化石の多くについて、剖出作業、また部位の特定を行う必要がある。これまでは、優先順位をつけることなく、個々の標本についてこれらの作業を実施してきたが、今後は目視・顕微鏡下の観察において、可能な限り部位の特定を行うと同時に、剖出作業の優先順位、また剖出範囲(全てか一部)を選定し、効率的な標本処理に努める。 前年度は、現生種、主としてトノサマガエルについて、目標個体数を上回る資料を採集したが、多くの個体が平均的生体サイズより小さく亜生体と考えられる。これらの資料は成長による形質の変異を検討する上で有益な資料であるが、種内・種間の形質変異を検討するためには、より多くの生体個体を入手する必要がある。前年度は日中を中心に採集していたが今年度は繁殖活動が盛んになる夜間に集中し、また新たな調査地も加え資料収集に努める。また前年度は資料の処理の際、アルコールで一時固定後冷凍し、計測や写真撮影の度に解凍・冷凍を繰り返していたため組織が損壊し、卵巣や精嚢の形状が確認しづらく雌雄の判別が困難であった。本年度は、採集時に体長を計測し生体個体に近いサイズのみ採集し、70%エタノールで液侵標本として保管し、速やかに骨格標本の作製に努める。 今年度においては、各骨格部位に関し、同一種内における個体内・雌雄間変異、また各分類群間における骨形質の比較検討が主な研究内容となる。同一種の資料は前述した標本を用い、前年度の結果とあわせ、改めて骨形態の変異等について検討する。分類群間の比較においては、研究申請者がこれまでの研究活動において採集していた国内に分布生息する複数種について骨格標本を作製し、加えて先行研究や前年度の研究活動において収集している国内・国外種の各骨格部位の形質情報を整理し、それぞれについて比較検討を行い各骨形質の差異について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:当該年度には研究期間全体を通じ必要とされる双眼実体顕微鏡、顕微鏡カメラ等、ノートPC等を購入したが、当初予定していた金額より安価に購入できた。また、当初年度で購入予定であった一眼レフカメラ、レンズ等については研究の進捗を加味し購入を次年度に見送った。また標本採集において想定していた旅費についても、近隣地域で短期間に資料が採集できたため、想定より支出が抑えられた。また、当該年度必要に応じ化石標本のCT撮影を外部機関で行う予定であったが、資料の選別に至らなかった。
使用計画:30年度においては、前年度購入を見送った物品、研究進捗において適宜必要とされる物品(携行用顕微鏡)・消耗品(標本箱、解剖用具、アルコール)の購入、また標本採集や、当初計画に加えた研究機関への旅費、加えて前年度予定であった化石標本のCT撮影等の委託経費に前年度繰越予算を使用する計画である。
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備考 |
現在は昨年度実績が表示されているが、各年各研究員の個人実績が同HPで公開される。
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