研究課題/領域番号 |
17K18442
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
池田 忠広 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50508455)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 篠山層群 / 化石 / カエル類 |
研究実績の概要 |
篠山層群産カエル類化石は、現在1206点確認されており、間接や密集標本に加え、多くが部分骨である。その内半数については剖出・整理が終了しており、残り標本についても通年どおりに作業を進める。当該年度は下記の四項目について検討した。 ①昨年度に引き続き、分類に有用な形質を特定するため、現生種の採集及び骨格標本の作製、個体、雌雄間、種間の変異を検討した。昨年度の反省も踏まえ、トノサマガエルをあらたに53標本採集し、体サイズが大きい一部の資料の骨格標本を製作し、前年度の標本とともに検討した結果、少なくともトノサマガエル種内において腸骨背方稜や背方隆起の発達程度、また仙椎前球状顆などに変異が見られた。 ②改めて中生代カエル化石の文献情報から、各分類群の標徴の内約を検討し、標徴を示す各骨格部位、また用いられる部位・形質の傾向を検討した。結果、主として標徴として用いられる部位は頭骨や肩帯要素であり、腸骨や椎骨の形状も一部用いられるものの、頭蓋後方、大腿骨や脛腓骨などについては、相対的な長さなどに留まり細かな形質が標徴として用いられる例は少ない。 ③同層から記載報告されているHyogobatrachusとTambabatrachusのCTデータから個々の詳細な形質を検討することを目的とし、同種のCTデータを3Dデータ化し、個々の部位の3Dモデル作成に取組んだ。目下作業は継続中であるが、基となるCTデータの質により、作業は困難であるが、大腿骨遠位端の形状など目視では確認できなった新たな特徴が確認されている。 ④ ③と平行して、剖出済み化石標本の複数を対象に、形質、また形態型を検討すると同時に、前記した二種と比較し検討した。結果、多くの標本が両種に帰属すると考えられ、同種の特徴として追記できる形質が幾つか確認されている。また、現段階では前二種とは明確に異なる新たな形態型の確認には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
篠山層群産カエル化石は各年実施される調査により増加しており、約半数については、剖出・整理作業が終了しているが完全標本は少なく、今後も研究期間全体を通じて同作業を実施し、より良い参照資料の入手に努める。 当該年度では、前年度の反省を受け、現生資料の採集・保管方法を見直した上で追加資料を新たに入手し、雌雄を顕微鏡下で明確に判別し、骨格標本の作製に取組んだ。しかしながら、作業には想定以上の時間をようし、当初の目標である種内や雌雄間変異等を検討できるほど資料が得られていない。今年度の追加標本により、それら形質変異について新たな知見も得られているがより検討の制度を挙げるためには、更なる検討が必要である。したがって、前記の研究にかんして、本研究は相対的に遅れていると判断される。 しかしながら、当該年度には、研究計画において該当年に予定していたものに加え、次年度に予定していた記載報告済みの二種(HyogobatrachusとTambabatrachus)遊離骨の3Dモデルの作成、また最終年度に予定していた化石標本の分類学的帰属の検討にも一部取組んでいる。次年度以降の課題を先行的に取組んだ理由としては、研究計画を一部見直し、機器や施設の利用条件や、また標本の整理・管理などの研究実施施設の課題に対し柔軟に対応すべく、現段階で検討できる課題については先行的に取組んだ。 したがって、当研究の現在までの進捗状況は、当該年度の課題については遅れが生じているが、次年度以降の課題についても一部取組んでいることから全体的には「やや遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象とする化石標本は各年増加している。次年度も今年度同様、参照資料として有用な標本を選別し、剖出作業の優先順位や、その程度を決め、効率的な標本処理に努める。 研究の進捗状況についても記述したが、現生種を対象とした研究課題(同一種内における個体内・雌雄間変異、また各分類群間における骨形質の比較検討)に遅れが生じている。これら課題を解決すべく、今後も参照資料として有益(成体サイズ平均以上)な個体採集と同時に、数十個の骨格標本の作製に努め参照標本を増やす。また先行研究や前年度の研究活動において収集している国内・国外種の各骨格部位の形質情報を整理し、前年度までの成果とあわせ検討し、化石標本の分類学的帰属を検討するうえで有益な形質の選定に取組む。加えて本年度も検討したが、化石標本の分類学的帰属を検討するうえで必要となる中生代化石種の各遊離骨の形質情報について、文献情報や実物標本の観察等をもとに改めて整理検討する。 次年度の大きな研究課題としては、先行研究で記載されている二種(HyogobatrachusとTambabatrachus)に関し、各遊離骨の3Dデータの構築、個々の詳細な形質の整理であるが、現在は研究代表者が所属する施設にある共用PCにおいて同作業を行っており、作業期間や時間に制約があるため、作業を効率的に行えないのが現状である。同課題を解決するために、本研究費で専用ソフト・また作業PCを購入し円滑に作業が行える環境を整備し、よりよい成果が得られるように努める。また本年度も一時検討したが、次年度においても最終年度課題としていた化石標本の分類学的帰属について、今後得られると予想される既知二種の3Dデータをもとにそれらと比較し、その帰属(同種とされるか否か)についても可能な限り検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:当該年度には、アルゼンチンのラプラタ博物館、トゥクマン自然史博物館、ベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館での調査を予定し、担当学芸員と交渉を進めていたが、日程等の調整が難航し、渡航を断念せざるを得なかった。急遽、渡航先を大英自然史博物館に変更したが、他の業務の関係で渡航期間が限られており、欧米他の研究施設に赴くことが出来なかった。また、学会発表に相当する研究成果が十分に得られておらず、当該年度では発表を見送ったため、想定より旅費の執行が滞ったため次年度に繰り越すことになった。
使用計画:31年度においては、当初予定にはないが研究の推進のため必要とされる化石CTデータの三次元合成ソフト(Amira 2019)、PC用品、顕微鏡用品等を次年度繰越金で購入する予定である(既に購入に向けた手続きを進めている)。当該年度予算は、物品費は解剖器具や消耗品の購入、旅費は標本収集や国内外研究施設での調査、また学会発表、人件費・謝金・その他は化石標本のCTデータの撮影及び剖出技師の雇用等で執行する予定である。
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