研究課題/領域番号 |
17K18444
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
尾原 幸治 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (00625486)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 硫化物ガラス / 差分PDF解析 / 時分割PDF解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、ガラスと結晶の同時in situ構造解析技術手法を確立し、硫化物ガラスの結晶化における構造変化とイオン伝導の相関性を明らかにすることを目的としている。今年度は、「第一段階:差分二体分布関数(d-PDF)解析によるガラスと結晶の混在構造技術確立」を遂行し、Li3PS4硫化物ガラスの結晶化過程の結晶構造とガラス構造の分離が可能であることを報告した。本手法により求まる結晶化度の値は、NMRにより求められた値と同等の値であり、差分PDF解析の妥当性も確認した。本技術により、混在構造中のLiイオン伝導度の向上は、ガラスと結晶の構造変化ではなく、粒子表面に形成された微結晶の存在が要因である可能性を明らかにした。当該研究の内容について、Sci. Rep.誌へ投稿し受理された。 「第2段階:in situ PDF解析環境の整備」については、SPring-8のBL04B2及びBL08Wにて大面積2次元検出器を用いた時分割PDF解析の開発を進めた。標準試料により測定時間を評価したところ、数秒程度の測定で従来の測定結果と同じ統計のデータを取得することが可能となった。さらに、「第3段階:in situ PDF解析による硫化物イオン周囲の電子状態と可動イオン分布の可視化」へ着手し、Li7P3S11硫化物ガラス(結晶化によりイオン伝導度が向上)の結晶化過程観察の時分割PDF解析を試みた。現在、その実験データを解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
差分PDF解析により混相構造分離技術確立と、大面積2次元検出器を用いた時分割PDF解析装置の立上げ、共に順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
時分割PDF解析装置開発に関する内容について、1つの成果として発表する。そのあと、硫化物ガラスの結晶化過程の秒スケールでの構造変化可視化を達成するため、本開発手法を適用し、その構造変化とリチウムイオン伝導の相関に関する理解を目指す。まずは、Li7P3S11の加熱レート違いによる結晶化の違い、組成による結晶化の違い等の評価を予定している。さらに、LGPSなどのイオン伝導の高い硫化物ガラス材料の結晶化も調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
時分割PDF解析装置に関するアタッチメント製作費用が、想定以下の額にて済んだ。しかし、当初想定していなかった改良などの工作が発生している。次年度使用額は、そちらへの補填を計画している。
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