研究課題
本研究では、硫化物ガラスの結晶化によるイオン伝導性の変化に着目し、in situ PDF解析より硫化物ガラスの結晶化過程におけるガラス・結晶双方の構造変化を可視化し、高速イオン伝導のメカニズム解明を目指した。最終年度は、「第二段階:In situ PDF解析環境の整備」について、初年度に引き続きSPring-8のBL04B2およびBL08Wにて、大面積2次元検出器を用いた時分割PDF解析の開発を進めた。検出器の冷却整備や迷光除去対策により、標準試料にて1秒の計測で十分な統計精度のデータを取得可能となった。さらに、「第三段階:in situ PDF解析による硫化物ガラス電解質の結晶化過程の構造変化可視化」について、本開発手法より試みた。硫化物ガラスLi7P3S11ガラスは加熱速度の違いによって異なる結晶相へ転移し、得られるイオン伝導率も異なるため、異なる加熱速度(10℃/min と2℃/min)にて、結晶化に到るまでのガラス構造の変化をin-situ PDF解析により観察した。その結果、10℃/minにおいてのみ、270℃付近で結晶化が促進されている(明瞭な変曲点を示す)ことが分かった。一方、2℃/minは同様なピークの成長は見られなかった。加熱速度10℃/minにて得られた硫化物ガラスは、高いイオン伝導率を示すため、このような結晶化の促進が高いイオン伝導機構形成に必要不可欠である、と考えられる。当該開発・研究内容は、J. Synchrotron Rad.誌へ投稿し、受理された。
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Journal of Synchrotron Radiation
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