研究課題/領域番号 |
17K18457
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大河内 直之 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (30361679)
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研究分担者 |
布川 清彦 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (90376658)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 音声ガイド / 聴覚障害 / 字幕 / ユーザニーズ / 映像メディア / バリアフリー映画 / アクセシビリティ |
研究実績の概要 |
2019年度に、4条件×5クリップの計20クリップに再編したビデオクリップを使用して、視覚障害者7名に対して調査を実施したが、ストーリーをランダム提示する素材であったため、内容理解に大きなばらつきが生じ、音声ガイドの適切な評価データが得られなかった。よって、期間を1年延長し、2020年度では調査用ビデオ素材を再度作成し、その素材にて再調査を実施することとした。 年度前半では、15分程度でストーリーが完結するアニメーション映画をベースに字幕と音声ガイドを付与したバリアフリー映画の調査用素材を作成した。その素材にて、年度後半は調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルスの感染状況が収束せず、対面での調査を実施することができなかった。オンラインでの調査も検討したものの、1)オンラインでは個々人の音声・画面環境が異なり環境統制が難しいこと、2)視覚障害・聴覚障害のある研究参加者にオンライン上での適切な情報保障をするための技術が確立されていないこと、3)そもそもオンライン会議は視覚障害者・聴覚障害者にとってハードルが高くコンピュータスキルの高い一部の参加者のみの調査にとどまってしまうこと、等の理由により、現実的な方法ではないと判断し断念した。 また、再度の期間延長が認められたことから、次年度に改めて対面にて調査を実施することを前提に、今年度は調査素材の最適化並びに調査項目の再検討を行った。同時に、視覚障害者・聴覚障害者の映画・演劇鑑賞におけるニーズ調査も継続し、最新の情報収集に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、ストーリー完結型の調査素材の再作成ならびに、その素材を使った視覚障害者・聴覚障害者への調査を実施し、バリアフリー映画における詳細なニーズの抽出と評価尺度の確立を目標としていた。 目的の調査素材は15分程度のアニメーション映画をベースに作成にこぎつけることができ、調査の準備は整ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大により、対面での調査の見通しが全く立たない状態となった。オンラインでの調査も検討したものの、視覚障害者や聴覚障害者がバリアフリー映画を評価するための音声環境・画面環境・情報保障環境等をオンラインで実現するためのハードルが非常に高く、実質的な調査ができないと判断した。また期間の延長が認められたことから、検討の結果、次年度に改めて対面式での個別調査を実施することとした。 上記の理由により、研究の達成度を「(4)遅れている」とした。調査素材は完成しており、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着けば、すぐにでも調査を実施できる状態であるため、次年度は遅れている視覚障害者・聴覚障害者に対する調査を速やかに行い、バリアフリー映画におけるニーズの抽出ならびに評価尺度を確立し、本研究の取りまとめとしたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度製作したストーリー完結型の短編調査素材を使って、大幅に遅れている視覚障害者・聴覚障害者に対する調査を早急に実施し、詳細なニーズの抽出ならび にデータの収集を行う。また、以前クリップ化に活用した映画素材を活用し、視覚障害者と聴覚障害者が、同じ場面・シーンを観賞する場合、字幕や音声ガイドを介してどこまで場面を共有できているかを検証するための上映会ならびに意見交換会を実施する。 これら調査で得られた視覚障害者・聴覚障害者のニーズに基づき、バリアフリー映画等における音声ガイド・字幕の製作及び付与の方法についての評価システムを構築する。また、同評価システムを音声ガイドならびに字幕製作の現場にフィードバックし、同システムを今後の映画をはじめとした映像メディア・舞台芸術等のバリアフリー化製作に反映させていく。 なお、当初予定していた視覚と聴覚の両方に障害を併せ持つ盲ろう者や日本語未学習の外国人に対する調査については、調査素材作成ならびに障害当事者に対する調査の大幅な遅れや字幕や音声ガイドを取り巻く情勢の変化等に鑑み、本研究では直接的な調査を断念し、音声ガイドにニーズのある視覚障害者、字幕にニーズのある聴覚障害者に特化して、調査ならびに評価システムの構築を目指すこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用が生じた理由> 7.「現在までの進捗状況」の欄にも記載したとおり、再調査用の素材を作成したものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、視覚障害者及び聴覚障害者に対する対面式での調査を実施することが不可能であった。本調査は、対面式でないと適切な評価・データ収集ができないため、またもう1年期間延長が認められたことから、次年度に再度対面式の調査を実施することとなった。それら調査にかかわる費用が必要となったため、次年度使用額が生じることとなった。 <使用計画> 視覚障害者・聴覚障害者ユーザへのニーズ調査ならびに意見交換会を引き続き実施するため、調査費用(謝金・旅費・情報保障費等)を一部、次年度使用額から支出する。
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備考 |
その他、一般向けアウトリーチ活動として、「インクルーシブまるごと実現プロジェクト(バリアフリー映画上映)」主催:DPI日本会議(2021.3.23)をはじめ、上映会および講演会等でバリアフリー映画の普及啓発を行った。
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