研究課題/領域番号 |
17K18460
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
原田 健一 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70449255)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | デジタルアーカイブ / 地域メディア / 地域文化 / MALUI連携 / 中山間地域 / 中間的コミュニケーション / 統合型データベース / 文化資源 |
研究実績の概要 |
近代以降に現れたメディアによって生産された膨大な資料は、資料の現場からみたとき、マス・メディアの機関に限らず、さまざまな中間的な組織や関係性の結節点に、あるまとまりをもった群(かたまり)として残されている。こうした状況をふまえ、調査・研究としては資料・映像などを単体で扱うというより、群(かたまり)として扱い、資料のコンテクストを問題にしていく必要がでてきている。 こうした群としての資料・映像の社会的な関係性、場のコンテクストを明確にするには、必ずしも、その内容にこだわらない、横断的な関係性のあり方を探り出す必要がある。歴史資料、民俗資料、芸術資料など個々の研究領域の枠組み内で見ていたのでは分からない関連性、社会的な文脈を読み解くためにデータ群とデータ群とを統合し関連づけ、媒介することで、社会で生み出されている不可視の構造性、社会的意識、感情、感覚の共通性、あるいは問題をえぐり出す必要がでてきている。 デジタル化によるさまざまなメディアを統合していくことは、こうしたことを可能にする一つの方法といえる。本研究は2017年3月より可動する統合型データベース「にいがた MALUI連携地域データベース」によって、地域資料・映像の領域横断的な研究を現実化させるためのものである。そのためには、地域のさまざまな機関と連携しつつ、映像を発掘、整理し、デジタル化をしてデータベースを作成しつつ、統合していくという地道な作業を行っている。その上で、地域でのワークショップや展示会、上映会などを開催しつつ、さまざまな形で聞き取り調査を行っている。総体として、データの蓄積をもって日常生活における映像メディアのあり方を具体的な局面から明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域の映像資料は、一つ一つのかたまりとして地域のあちらこちらに、時間的、空間的に点在している。こうした資料のあり方は、新聞、放送などの事業体としてのメディアの恒常性とは違った、必要な時にだけ表れる自生的なメディアとしての間歇性をもって現れている。地域性をもったコミュニティによって生み出されるオルタナティブなメディアの流れは断続的に、継続する。地域メディアはマス・コミュニケーションのレベルからパーソナルなレベルにかけて、いくつかのレイアーが重なるように積み上がり、また相互に関連しあいながら展開している。つまり、地域においては、異なったコミュニケーションの様態に合わせてさまざまな資料のレイアーが生れており、地域の資料、データ、情報を集合し、集積するとき、こうしたいくつかの異なった(メディアを含む)レイアーをどう集合させ、研究的に再構成するかが課題となる。これはそれまで、新聞研究、映画研究、写真研究など個々で行われてきた異なる領域を横断的に研究する枠組みを、新たにどう構築するかという課題とも重なる。 本研究では、平野部や都市部より、特に中山間地域に焦点をあわせながら、調査を進めている。なぜなら、地域の映像メディアの展開は、平野部や都市部より中山間地域において極めて特徴的な普及のあり方を示すことが分かってきているからだ。本年度は、中山間地域の機関と連携をし、映像資料を発掘し、整理作業をし、一部であるが、デジタル化を行った。また、地域と中央との関係を明らかにする事例として、県観光課の職員であり、写真家であった中俣正義のカラー写真のデジタル化も行った。デジタル化した映像の一部は、メタデータを付与して「にいがた MALUI連携地域データベース」にサイトアップした。
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今後の研究の推進方策 |
既に述べたように、本研究は2017年3月より可動する統合型データベース「にいがた MALUI連携地域データベース」によって、地域資料・映像の領域横断的な研究を現実化させるものだ。そのためには、地域のさまざまな機関と連携しつつ、映像を発掘、整理し、デジタル化をしてデータベースを作成しつつ、統合していくという地道な作業をベースにしている。2017年度は金山町、魚沼市など地域の機関との連携は順調に進んでおり、2018年度においても発掘された映像の整理、デジタル化を進め、「にいがた MALUI連携地域データベース」にサイトアップするために、メタデータを付与していく作業を行う。今年度は約2万点の映像のサイトアップを予定している。 当然のことながら、これらの作業には、地域住民への調査が必要とされる。地域の協力者からの聞き取り調査だけでなく、さらなる調査、研究の環を広げるためにも、大規模な展示、上映なども必要とされる。2018年度においては新潟県立博物館と連携し、2019年1月から3月にかけて新潟県立博物館で展覧会を開催し、研究発表、あるいは小学校が博物館に参加しての授業ワークショップなどを実施するなど、多面的なアプローチを行う。また、地域と中央との関係をより明確にしていくために、放送番組センター、あるいは記録映画保存センターの映像の地域機関での映像の公開などについて、交渉を順次行っていく予定である。こうしたプロセスにおいて、中央のナショナルなマスの〈大きな歴史〉と地域のマイナーな〈小さな歴史〉をいかに架橋させ、さらにはまた、中央と地方というヒエラルキーをいかに研究・教育的に解体させるかという課題に応え、さらには、地域情報、データを地域に還元し、活用する基盤を構築し、地域創生へのボトムアップを用意することになるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
映像資料などの整理作業が遅れ、2018年2月末にデジタル化の作業のために業者依頼をしたが、3月末までの納品が困難であることが分かったため、デジタル化の作業を2018年度に行うこととした。本研究は映像を発掘、整理し、デジタル化をしてデータベースを作成しつつ、統合していくという地道な作業を基本としているため、作業を行う人件費に約100万円を予定している。また、発掘した映像などの資料の内容の調査、分析を進めるためにもデジタル化が必須の作業であることを鑑み、デジタル化の作業費に約100万円を予定している。なお、県内の調査などのみならず、県外での連携した調査、研究を進めるための打ち合わせなどが必要のために約30万円を予定している。外付けHDDなど他、諸雑費に約10万円を予定している。
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備考 |
「にいがた MALUI連携地域データベース」は連携した機関、あるいは申請した研究者のみ閲覧が可能である。
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