新潟における中山間地域の映像資料、特に、中俣正義、角田勝之助などこれら地域で発掘された映像コレクションを中心に調査を行った。なぜなら、地域の映像メディアの展開は、平野部や都市部より中山間地域において極めて特徴的な普及のあり方を示すことが分かってきたからだ。中山間地域の映像メディアの多様なあり方、内容、社会的文脈は、今後、これまでの都市と農村という研究枠組みを再検討するものとなるだろう。 なお、こうした分析を具体化するために、中山間地域で発掘された写真約15000コマのデジタルデータを「にいがた MALUI連携地域データベース」にアップするためにタグ付けなどのインディキシングの作業を行い、2019年3月にサイトアップをした。 これらの映像を地域での聞き取り調査をし、データベース化するだけでなく、さらなる調査、研究の環を広げるためにも、大規模な展示、上映などが必要とされる。2018年度においては新潟県立歴史博物館と連携し、2019年1月から3月にかけて「村の肖像」展を開催し、約7400人の観覧を得た。また、展覧会開催にあわせて研究発表、あるいは小中高校生が博物館に参加しての授業ワークショップなどを実施するなど、多面的なアプローチを行った。 また、地域と中央との関係をより明確にしていくために、放送番組センター、あるいは記録映画保存センターの映像の地域機関での映像の公開などについて、交渉を行い、順次、実現した。こうしたプロセスにおいて、中央のナショナルなマスの〈大きな歴史〉と地域のマイナーな〈小さな歴史〉をいかに架橋させ、さらにはまた、中央と地方というヒエラルキーをいかに研究・教育的に解体させるかという課題に応えた。 これは、地域情報、データを地域に還元し、活用する基盤を構築し、地域創生へのボトムアップを用意する循環的な研究・教育サイクルを実践的にデザインし構築するものだ。
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