平成29年度に「集積抽出」「過還元再抽出」「沈殿抽出」の還元抽出方法によって、極少量ではあるが「藍」の顔料化に成功した。そこで平成30年度前期は、絵具の材料に最適な有機天然顔料の精製技術を導き出すために、色の発色に関わるPH 数値を計測しながら、加熱抽出と水簸の方法を変え、顔料の粒子径や表面形状を自然科学的手法で調べ、絵具に最適な有機天然顔料の精製方法を検証した。 抽出に成功した「藍」顔料の粒子径や表面形状によって、耐光性堅牢度・分散性の精度・着色力の強度・透明性が異なることが判明しており、本研究の産学連携機関であるDIC(株)分析センターでは、赤外分光(有機化合物の定性)、蛍光X線分析(含有元素の測定)、X線回析(無機成分の定性)、液体クロマトグラフ質量分析法(成分分離・純度)を用いて顔料分析をおこなった。DICグラフィックス(株)技術本部は、色見本帳「DICカラーガイド」の色彩資産を基に、研究成果のひとつとして多くの人が等しく本研究でつくられた顔料についての情報を認識できるようなカラーユニバーサルデザインの可能性を検証した。 また、「藍」以外の有機天然顔料の精製についても、植物によって色素量が異なるため、これまでの研究成果を基本数値とし、発色剤としての酢酸アルミまたは明礬、アルカリ剤として炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを加えた実験を繰り返し、精製方法を導き出すことができた。 平成30年度後期は、ヒトの感覚を測定機として、触覚性・視覚性・物語性についての官能評価塗布試験と熟覧鑑査をおこなった。顔料の分散性が高く粒子が微細かつ透明性のある理想的な絵具づくりを目指し、「彩度・透明性・粘度・着色力・安定性」の観点から、研究代表者と研究協力者4名が抽出に成功した顔料を用いて、油絵・版画・染色・立体・陶磁の作品を制作し、愛知県立芸術大学芸術資料館にて研究発表した。
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