研究課題/領域番号 |
17K18466
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
原木 万紀子 立命館大学, 共通教育推進機構, 准教授 (60778926)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 情報デザイン / メディカルイラストレーション / インフォグラフィック(infographics) / 裁判員裁判 / 科学コミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究は、インフォグラフィック(以下IG)の一種と捉えられている、メディカルイラストレーション(MI)の技量を、裁判員裁判で用いる遺体写真へと応用し、裁判員が被る心理的負担を軽減しうる、証拠として適切なIGの作成、および作成フレームワークの確立を試みるものである。しかし、その大元である、IG の明確な必要条件や定義は、現在まで曖昧なものとされていた。 そこで、研究の最終段階で行う予定であった、IGが如何なるものであるのかを、当該分野・関連領域における研究結果や知見をまとめ合わせた上で、IGの方向性を示す書籍の執筆を、先に行うべきであると判断し、株式会社勁草書房より、『芸術と情報のあいだ 情報を描写するインフォグラフィックスの素描』というタイトルにて、2018年2月に刊行した(ISBN:978-4-326-80059-9)。 現在までに、様々な分野にて別々に行われていた、IGに分類されうる対象の研究や知見をまとめ、現在におけるIGの概要、条件として必要とされうるであろう点について言及し、今後の活用へとつなげるための、初学者・入門向けとして内容を構成した。学術研究対象としてIGを扱った書籍として国内では数少ない1冊となった。 当初、先に行うはずであった調査のためのプロトタイプIGの作成については、プレプロトタイプとして試作を試み、使用しているデータベースに保存されている写真と文章の所見が異なる(ヒューマンエラーが生じる)場合があることを確認した。写真と所見を照らし合わせながら、情報をIG化する本研究は、所見のヒューマンエラーに対するチェックとして効力がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、調査研究および調査にかかるイラスト(IG)のプロトタイプの検討に充てていたが、計画を前後させたために、調査自体がおくれている状況である。しかし、現在プロトタイプの作成は進んでおり、当該施設の倫理申請の許可が下り次第、直ちに調査を始める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
調査においては、少し進行が遅れているが、当初予定をしていた調査対象を、減らす方向で検討している。当初は、法医学研究者、裁判員となりうるであろう当該施設の大学学部生、法曹関係者を調査対象者としていたが、精神的ストレス・負担が大きい点、また遺体写真から、証拠として適切な情報を抜き出してIG化することを最終的な目標と考えた際、裁判員となりうるであろう人々への調査は、医学としての情報の正しさ(法医学研究者の知見)、証拠として機能しうるかどうかの正確性(法曹関係者の知見)、を満たした後に行うことが適切であると考えた。 そのため、大学学部生への調査を見送る方針である。 研究がさらに進んだ段階で、適切な手続きを取った後に、裁判員となりうるであろう人々への調査を細心の注意を払った上で行い、証拠として正しい情報を、どのような描写にて提供すべきであるかの最終的な確認の場として設けていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に行う予定であった、書籍の出版を先に行ったため、イラストレーションのプロトタイプの作成および、作成にかかる謝礼および調査費用が発生しなかった。そのため、初年度の計画を次年度に行うため、次年度使用額は、初年度に予定をしていたイラストレーションのプロトタイプ作成のための調査・参考文献収集、および実際の作成費用(外部委託)、調査を行う際の謝礼および調査データ保存のための鍵付きロッカー、ボイスレコーダ等の諸備品に充当する予定である。また、研究協力施設での倫理申請を行うにあたり、申請時と手続き内容が変更され、申請に際し1件あたり3万円程が必要になったため、倫理申請時の費用としても充当予定である。
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