本研究は、裁判員が被る心理的負担の軽減を目指し、その一要因とされる遺体写真の代用として活用が期待される、インフォグラフィック(以下 IG)の証拠として適切な情報描写度を、法学、法医学、美術の知識、技量を用いて明らかにするものであり当初予定をしていた各調査、(1)法医学の観点、(2)裁判員の観点、(3)法曹の観点、3 つのうち最終年度までに(1)、(2)を実施しそれぞれの結果は学術論文として国際誌に発表した。
当初の想定以上に(1)の調査までのプロセスに時間を要した。本研究ではIG作成に向けたフレームワーク作成を最終的な目的の1つとしているため、法医学的情報を欠かずにIG化することに重きをおいた。法医学者が持つ専門的な知識を崩さずIG化するための技術を選定するのに時間を要したが、2000年代に出ていた唯一の先行研究に続いて2本目の法廷で使用することを想定したIGの論文を発表するに至り、本論文で初めて殺人を含んだケースを扱った(参照:DOI: 10.1080/17453054.2019.1687287)。 また心理的な負担の多さから法廷証拠(Gruesome evidence)を用いた市民を対象にした研究は少ないが、IGを用いて心理的負担の度合いをアンケート調査した論文も国際誌へ発表をし(参照:10.1080/17453054.2019.1707074)、法学分野における裁判員および陪審員の心理的負担問題に対して1つの解決策の糸口を提示することができたと考える。 またこれらのベースとなるIGの基礎的な研究(博論の一部)についても国際誌で発表し(参照:10.1080/17453054.2019.1633237)、現在当該雑誌のMost read articles に(第5位)ランクインするなど法医学分野におけるIGだけでなく、IG全体の研究として着実に結果を出しつつあると評価する。
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