本研究は、主に東日本大震災、福島原発事故に関するメディア文化状況の記録と検証を試みるものである。メディア議題の観点から見るならば、当初は、東北地方太平洋沖地震により引き起こされた被害が広範に語られたが、大地震および原発事故の発生から月日が経過する中で、メディア・言説空間では、原発エネルギー政策のありようへの関心などから、引き続き原発に関連する議論が議題化されてきた。そのため、主に福島原発事故後の、原発・エネルギー政策、関連の代替エネルギー政策についてのメディアの議論と表象について多角的な実証研究を実施した。福島原発事故は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による地震動と津波の影響により発生した。福島第一原子力発電所における炉心溶融(メルトダウン)などの一連の放射性物質の放出による環境、食品、人体などへの影響、多数の住民の避難、社会的・経済的影響、さらには風評被害に至るまで、その影響は計り知れないものがある。そのため、昨年度は、主に福島原発事故後のメディア、ジャーナリズム、および政治政党の議論を概観しつつ、「3.11」後の状況を総合的に検証する試みを引き続き行った。研究成果の一部は、英語書籍、研究発表などによって発信した。特に一作年、東日本大震災、福島原発事故から10年の節目を迎えたため、これまでのメディア、ジャーナリズム、政治における言説の変容についての俯瞰的な整理に傾注した。合わせて、2020年から世界のみならず日本でも進行しているコロナ禍そのものについての調査も並行して実施した。これまでの研究成果を総合し、英語による単著書籍Japanese Media and the Intelligentsia after Fukushima: Disaster Culture (Routledge 2022)他で、研究成果を多角的に発信することが出来た。
|