研究課題/領域番号 |
17K18471
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研究機関 | 木更津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小谷 俊博 木更津工業高等専門学校, 人文学系, 准教授 (80708909)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 脳神経倫理学 |
研究実績の概要 |
今年度は、精神障害や自然主義的な倫理学の多岐にわたるアプローチについて情報収集を行いつつ、成果としては3月に「ポール・チャーチランドの脳神経倫理学的アプローチについて」と題する論文を『倫理学』に投稿した。論文の内容は、膨大なシナプス結合により道徳的諸現象が構成される、というポール・チャーチランドのボトムアップ式の脳神経倫理学的アプローチについて、アンディ・クラークやアラスデア・マッキンタイアらの批判への応答可能性を検討しながら、その課題を明らかにしたものである。チャーチランドは、言語的な定式化や規則ベースの道徳理解を徹底的に批判し、状況依存的な実践的判断として道徳判断を捉え直す。しかし、規則が道徳実践、とりわけ道徳教育の場面では有用であり、かつ不可欠な要素として機能していることは明らかである。本論文では、チャーチランドの構想にとって、規則遵守を道徳的実践の要素として取り込むことは、決して相対立するものではないことを指摘し、より包括的な脳神経倫理学的探求が可能であることを示唆した。本論文の成果により、脳機能ベースの道徳的責任論、特にパトリシア・チャーチランドの道徳的責任論がどのような枠組みのもとに展開されるかがより明確になった。道徳的責任のプロトタイプ的な理解、およびそこからグラデーションのように放射的に責任概念が周縁化する中で、発達障害者がどこに位置づけられうるかを探求する上でも、言語認識、規則遵守を含めた広範な要素を取り込む探求モデルの可能性を提示できたことは、探求の方向性を明確化する上で非常に意義があるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画を立案している当初には想定していなかった長期間の研修が入ったこと、および、文献の読み込みが想定よりも難航していることが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を延長し、当初は平成30年度に行う予定であった、発達障害者に焦点を当てた道徳的責任論を推進したい。そのために必要なことは、パトリシア・チャーチランドの道徳的責任論をまとめること、および発達障害者の道徳判断についての知見をまとめることである。この2点に絞って、研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期研修が入ったため、当初の使用計画より少額の使用となった。次年度は、学会・研究会への旅費と情報収集のための文献購入等に使用する計画である。
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