研究課題
バイオリンの音色を決定づける要素は多岐にわたるが、本研究では調整時に分解の必要がない駒と魂柱に着目し、音響再現性の良い手法を採用した。バイオリンの音響評価方法は複数あるが、本研究では音響評価方法として、魂柱の調整による音圧指向性の変化に着目した。複数台のバイオリンを用いて職人による調整前後の音圧指向性をプロのバイオリン奏者の協力を得て測定し、その時の魂柱の位置関係と指向性の相関を得ることができた。指向性は正二十面体のマイクロホンアレイモデルを用いた。つまり、正二十面体と陵接球との交点30点、各頂点から中心までの線分が稜接球と交わる点12点の合計42点に超小型無指向性コンデンサマイクロフォンを配置した。各マイクロフォンで取得した音圧レベルを正規化し、三次元ベクトル及びカラースケールにより視覚化するシステムを構築し、視認性の高い音圧指向特性図を得た。魂柱位置の計測としてX線CTスキャンを実施した。スキャンの精度を考慮し、駒と魂柱の位置が計測可能な最小範囲のみを撮影した。管電圧は140kV、管電流は110μAに設定し、移動距離の計測を容易とするためにCT画像をSTL(Stereolithography)化した。本研究で得られた結果として、音圧指向性が最も先鋭となった魂柱位置を最適位置であると結論付けた。バイオリンは弓によって弦を擦弦し、その振動が表板から魂柱を介して裏板に伝わることで筐体内が共振する。魂柱は、表板の振動を裏板へ伝達する重要な役割を果たす。最適位置で指向性が最も先鋭化した理由として、魂柱が表板と裏板に対して垂直に把持された状態となることで、表裏の板との接触面積及び接触圧が増し、弦振動の伝達性能が向上したことが考えられる。以上の研究成果を学会誌European Journal of Engineering Research and Scienceにて発表した。
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European Journal of Engineering Research and Science
巻: Vol. 5, No. 3 ページ: p.314-p.319
10.24018/EJERS