スリランカの前世紀において激しくぶつかりあったパーナドゥラ論争を始め、五大論争地の調査研究やColombo論争の調査を行い、埋もれている資料、およびPeradeniya大学のスタッフの協力を求めてColombo大学や国立公文書館やマスメディア各社などが所蔵する資料の閲覧や調査・資料収集を完遂した。さらにその論争が起因となり世界的な仏教復興運動(Pali仏教聖典協会の創設など)、サルボダヤ協会へと連なっていった思想的な背景や運動の経緯を可能な限り解明できた。 本研究に対する国際的有効性を高めるべく英語で発信するため、シンポジューム等をPeradeniya大学スタッフの協力を得て開催した。他方、研究協力者と共にスリランカのイスラム社会の歴史や文化の現地調査を行った。またKandy地域のムスリムと仏教徒との共存関係を調査しその現状や問題点についても聞き取り調査を行った。スリランカ・イスラムの権威L.Devaraja博士はじめ関連の研究者との密接なネットワークの構築に努めた。現代社会における宗教問題に関する研究論文や啓蒙書さらにはマスメディアによって、現地の諸宗教共存の思想やその現実展開の意味を広く世界に発表するように努めた。一方、研究協力者と共に、ジャヤワルデナ研究はジャヤワルデナ記念館の協力を得て、その資料の分析も行い彼の寛容思想形成について検討し成果を英文の書物にて各大学ならびに関係機関などで発表ができ、不特定多数の人々より大きな賛同を得ることができた。 この他この宗教論争で勝利したとされる仏教側にはインド論証学の伝統がいかなる形で関わっているかについてインド論証学・論理学研究者の協力を得ることは期間の制約によって誠に遺憾と致し、中途半端になってしまった感がなきしもあらずものの、おおむね当初の研究目標である課題解明にほぼ達成できたと確信を致しております。
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