研究課題/領域番号 |
17K18474
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
加藤 弘子 都留文科大学, 文学部, 非常勤講師 (70600063)
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研究分担者 |
吉澤 早苗 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (00600719)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 日本美術史 / 西洋美術史 / イタリア絵画史 / 美術史 / 自然史 / 鳥類学 / 標本 / 進化思想 |
研究実績の概要 |
本研究は、美術史の〈様式 style〉と自然史の〈種 species〉というふたつの学術領域の根幹をなす基礎概念を手掛かりに、19世紀末にウィリアム・アンダーソンの日本美術史構築に適用された西洋美術史および自然史の基礎的方法とその相関関係を探るものである。日本を含む東アジアにおいて蒐集された膨大な美術品と動植物の標本は、ほぼ同時代に共通の眼差しで蒐集・目録化されており、草創期の日本美術史構築に適用された西洋美術史と自然史の手法には共通点があったと考えられる。最終的には、今後の日本および東アジア美術史構築に向けて、西洋美術史の基礎概念を適用する限界と可能性を考察し、研究方法の見直しを目的とする。 平成29年度は西洋美術史構築について基礎的な文献蒐集を行い、フランツ・クーグラーによる西洋美術史概説書を調査した。〈様式 style〉〈流派 school〉の概念を確認し、ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマン以来の〈折衷 eclectic〉に対する評価に注目して分析した。 日本美術史構築については、アンダーソンの日本美術史概説書などの著作における〈様式style〉〈流派 school〉の概念を確認した。 第1回研究会は円山応挙作品を調査し、分担者の吉澤早苗氏と日本美術史の基本的な研究方法や課題を共有し、様式と流派に関して〈付立て〉技法を見直す論文を発表した。第2回は東京国立博物館連続講座「日本における美術史学の誕生」にあわせて開催し、研究協力者の村角紀子氏(松江市史料編纂課専門調査員)と東京藝術大学教育資料編纂室で調査を行った。第3回は鳥類学の中村浩志氏(一般財団法人中村浩志国際鳥類研究所代表理事)と写生図や標本について意見交換し、ジャポニスム研究の小野文子氏(信州大学准教授)から文献と翻訳について助言を受けた。 以上のように、異なる専門の研究者と課題を共有して研究を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は6月末の科研内定後に、研究分担者、研究協力者に参加を要請して研究を開始した。研究会は9月からの開催であったが、予定どおり3回開催することができた。 日本美術史と西洋美術史の方法に関する研究では、予定していた文献調査を行い、ウィリアム・アンダーソン『日本の絵画芸術(The Pictorial Arts of Japan)』(1886)に掲載された参考文献と関係者名を精査し、調査対象を拡大した。また、円山応挙作品を20件調査し、様式と流派に関して技法面から分析した論文1本を発表した。 なお、当初の計画にはなかった重要な文献として、オックスフォード大学で行われた「ハーバート・スペンサー連続講演」の記録集であるアラン・グラフェン編「進化思想とその影響(Evolution and its Influence)」(1989)をとりあげ、その部分訳を分担者の吉澤早苗氏が進めた。 以上のように、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は自然史の方法に関する研究を中心に進める。大英博物館で開催された「中国・日本絵画展」(1888)に協力した鳥類学者ヘンリー・シーボームの日本鳥類概説書や目録を調査し、標本の〈種 species〉の解釈や〈亜種 subspecies〉の分類を分析して、アンダーソンによる日本美術史構築の手法と比較する。シーボーム旧蔵標本と、分類に際して参照した関連標本の所蔵先を調査し、必要に応じて標本の調査を実施する。 日本美術史および西洋美術史の方法に関する調査研究は、平成29年度の成果を受けて継続する。
1.自然史の方法に関する調査研究:ヘンリー・シーボーム『日本帝国の鳥類(The birds of the Japanese Empire)』(1890)ほか鳥類概説書・目録の調査研究(通年)、標本所在調査(4~9月)、シーボーム旧蔵および関連標本調査(随時)、日本鳥学会大会参加(9月) 2.日本美術史の方法に関する調査研究:平成29年度の成果を受けて継続、ウィリアム・アンダーソンほか日本美術史概説書の調査研究(通年)、様式と流派に関する作品調査(随時)、美術史学会全国大会参加(5月) 3.西洋美術史の方法に関する調査研究:平成29年度の成果を受けて継続、フランツ・クーグラーほか西洋美術史概説書の調査研究(通年)、様式と流派に関する作品調査(随時)
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象の範囲を広げる可能性が生じたため、当初、イギリスのみで想定していた調査は平成30年度に実施することにした。平成29年度の研究費残額は、この調査旅費等で支出する予定である。
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