研究実績の概要 |
研究計画の変更で追加した考古学や人類学など関連分野の研究と,ウィリアム・アンダーソンの日本美術史概説書 (William Anderson "The Pictorial Arts of Japan",1886)第1部の残り6章分の翻訳を進めた。 現在の日本美術史では〈縄文〉と〈弥生〉を日本美術の原点あるいは源流を示す対概念として用いているが,関連分野の研究の結果,一国史を前提として提唱された時代区分でもある〈縄文〉を〈弥生〉と対比させ,〈日本美術〉をそのまま〈日本人〉と結びつけて語る現状の危うさを再確認した。アンダーソンは初期の〈日本人〉の知識は「先住民のアイヌより進んだものではなく,中国にははるかにおよばなかった」と記述したが,のちに岡倉天心は東京美術学校の講義で,アイヌが絵画彫刻等を制作する位置に達していないことを理由に「美術の進歩をなし得たるもの」から除外している。 また,アンダーソンは当初,日本の絵画史を4期に分類して捉えていたが,没後に刊行された『ブリタニカ百科事典 第10版("The New Volumes of the Encyclopedia Britannica",1902年)』で担当した「絵画芸術(Pictorial Art)」解説では6期に分類し、最後まで研究を更新していたことを確認した。 この他,2018年度を中心に実施した鳥類標本に関する研究成果の一部を共著で発表した。
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