研究課題/領域番号 |
17K18474
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
加藤 弘子 都留文科大学, 文学部, 非常勤講師 (70600063)
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研究分担者 |
吉澤 早苗 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (00600719)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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キーワード | 日本美術史 / 西洋美術史 / 自然史 / 考古学 / 人類学 / アイヌ / 縄文 / ジャポニスム |
研究実績の概要 |
19世紀の日本美術史と諸学問の関係について総括を進める中で、現在の大学教育で使用している日本美術史概説書と日本美術全集の時代区分、地理的範囲、そして歴史認識を示す〈日本美術の原点〉に関する記述を調査した。その結果、一万数千年前の縄文時代の出土品を、成立して二百年足らずの近代国家の枠組みによって〈日本美術〉の主要な原点のひとつに位置付け、その後の〈日本美術史〉を和人と本州中心に記述し、その造形美を〈日本人〉のアイデンティティと結びつける傾向、また、沖縄を含む南西諸島地域と北海道の続縄文時代以降の出土品を〈中央〉に対する〈周縁〉として提示する視点の問題を確認した。 「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会 報告」(2009年)は「アイヌの歴史と文化を我が国の歴史と文化の中で確実に把握し、客観的に記述することは日本の多文化社会性を理解する上で肝要」と、公式にアイヌの歴史を記述して縄文の人々との関係に言及した。また、日本学術会議地域研究委員会人類学分科会は「アイヌ政策のあり方と国民的理解 報告」(2011年)にオホーツク文化の影響を追記した上で「アイヌの形態的特徴や遺伝的特徴はアイヌ民族が縄文文化の担い手だった人々と直接的な関係を持つことを示している」と明記した。日本学術会議史学委員会「報告 史学分野の展望 ―一国史を超えて人類の歴史へ」(2010年)は出版活動と博物館・美術館の果たすべき役割の重要性に言及しているが、その後出版された日本美術史概説書や美術全集の縄文時代には、まだこうした提言は反映されていない状況にある。 研究成果については、アメリカ・イギリス・日本の研究者とパネルセッション「〈日本美術史〉の脱中心化―時代区分、地理学、歴史学の再考」を企画し、アメリカアジア学会(AAS2022)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画の変更で追加した考古学と人類学分はほぼ予定どおり進み、国立アイヌ民族博物館などの国内調査は感染状況が落ち着いた時期に実施できたが、延期している在外日本美術に関する調査は実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたりこれまでの研究を総括するとともに、日本美術史の脱中心化についての研究を継続する。延期分の調査については状況を見極め、慎重に判断する。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の影響に伴う補助事業期間の再延長をしたため。調査が実施可能になった場合の旅費、撮影資料を整理する研究補助アルバイト謝金、資料および図版購入を予定している。
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