研究課題/領域番号 |
17K18477
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
猪俣 紀子 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (20734487)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
|
キーワード | パリジェンヌ / フランス文化 |
研究実績の概要 |
今年度は、戦後の日本におけるフランス文化移入に関して、様々なメディアに見られるフランス文化表象の資料を収集、閲覧した。例を挙げれば、医師であり出版人、文化人でもある式場隆三郎は、美術史のなかで初めての大衆娯楽としての美術鑑賞の画期として位置づけられている銀座松坂屋でのゴッホ複製原画展を1951年に開催した。式場は自身が紹介したゴッホの絵のモチーフを浴衣の柄として使用したり、その生地で洋装のワンピースをプロデュースした。戦後多くの日本人大衆にとって初めての西洋絵画体験であったゴッホが、複製原画であったこと、西洋絵画が日本の大衆用に翻案されたかたちで消費されていたことが明らかになり、現在の日本におけるパリジェンヌ幻想と地続きといえる示唆的な出来事と考えられる。また、マンガ作品におけるフランスを表象した作品についても収集した。戦後隆盛を極めたナンセンス大人漫画において、1960年代以降パリ、フランスについて扱っている作品がいくつか見つかった。フランス文学をインテリの象徴として使用する例が多くみられた。そのほかパリ・モードに関する作品もやはり存在し、洋装をパリの流行を参考に仕立てる様子や、当時行われていた娯楽としての大衆のためのファッションショーが取り上げられており、言及されるメゾンについては現在との相違がみられた。大衆の日常を描く新聞や総合週刊誌での4コマ漫画による日本社会でのフランス表象や、男性マンガ家によるフランス文化イメージを理解することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による資料収集の制限や、授業形態の変更やその対応などで、通常時より時間が取られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後可能な状況になれば、洋装に関する歴史的資料を専門図書館で閲覧、複写する。戦後の洋装関係の資料のリストを作成し、集めていくことを続けるとともに、戦後の日本における一般的なパリ・フランスイメージがわかるマンガ、新聞記事など大衆メディアの収集、分析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により資料収集等が制限されたため未使用額が生じた。次年度においては可能な範囲で資料閲覧、収集のための経費として引き続き使用する。
|