今年度は少女マンガ雑誌におけるフランス描写を分析した。これまで『週刊マーガレット』『週刊少女フレンド』『週刊少女コミック』の分析は行っていたが、今回は『花とゆめ』を対象とした。これまでの雑誌では、外国を舞台とした作品が一定数存在し、たとえば描かれるアメリカ、ドイツ、イギリスとフランスとのイメージには、アメリカであれば貧乏、上昇志向、主人公の活発さなど、フランスでは金持ち、モードなどハイカルチャーへの関連、主人公のおとなしさなどのある程度共通する特徴が抽出できた。しかし『花とゆめ』ではそのような特徴を挙げることが難しかった。それには、この雑誌の創刊が1974年と後発であったこと、これまでの雑誌との差異化のためもあり作品のラインナップが異なっていたことが考えられる。70年代以降も男性作家がこの雑誌の看板作品を担い、バイオレンスジャンル、ギャグジャンルなど独特の方向へ発展していくなかで、同時期のほかの少女マンガ雑誌で見られた「フランスイメージ」と共有するものがとくに挙げられなかった。当時大人の女性だけではなく、幼い少女マンガ読者にまでフランス、パリジェンヌに憧れる現象がひろがり、一般化していたことは明らかであるが、マンガ雑誌により外国イメージの描写には違いがあった。その後今日までに続く、理想化したパリジェンヌイメージを形成する女性層がどのようなメディア体験をしてきたかということも、近年の日本のパリジェンヌイメージ形成に大きな影響を与えていることが分かった。
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