研究課題/領域番号 |
17K18483
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
澤田 美恵子 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (80252815)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 工芸 / 第8回世界クラフト会議 / やきもの / 伝統工芸品 / 新たな価値の創造 |
研究実績の概要 |
今年度は主に3つの大きな研究実績をのこすことができた。 (1)明治から現在までの特に省庁(主に文化庁、経済産業省など)からの報告書と芸術・工芸関係の図書などを中心に言説を読み解き、また伝統工芸の工房への調査を取り入れながら、政府の方針が提案されてから、時間的経過のなかで、どのように実際の工芸品が変化したかを考察した。この研究実績をもとに、「やきもの そして 生きること」(理論社)を平成30年2月に上梓した。 (2)特に1978年に京都で行われた第8回世界クラフト会議に関する資料を収集し、それに関係し生存している人々にインタビュー調査を行った。この研究実績をもとに平成30年3月27日「工芸―新たな価値の創造」(京都市主催)で講演を行った。この講演は文字化されて、京都市のホームページで公開されている。 (3)伝統工芸品の一般的名称(外の言葉)を抽出し、写真つきの辞書を作成することと、伝統工芸の工房内で語られる言葉(内の言葉)を抽出し、その文脈とともに記述し、その言葉の意味を映像でも伝えるデータベースを作成するために、伝統的工芸品指定品目(経済産業大臣指定)が最も多い都道府県である京都(17)、東京(16)、新潟(16)、沖縄(14)をフィールドワークの場所とし、伝統的工芸品の工房を訪問し、職人にインタビュー調査を行い、言語学が伝統工芸という分野にアプローチする方法論の確立を目指した。この研究の今年度の実績として、京都における伝統工芸の工房、新潟における伝統工芸の工房、沖縄における伝統工芸の工房のインタビュー調査を行い、京都における研究実績をまとめて、写真付きで京都市、京都府、国指定の伝統工芸品64品を英語で説明した冊子「工芸Arts and Crafts in Kyoto」を平成30年3月に作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「やきもの そして 生きること」(理論社)を上梓した結果、京都新聞で2回(平成30年3月29日:くらし欄)、平成30年4月14日:芸術欄)本がカラーで紹介された。また「炎芸術」という陶芸では大変有名な雑誌でも、大きくカラーで新刊として2018夏号で紹介された。図書館関係でも今わかっているだけで、50館以上がこの本を購入されている。また、京都市主催で行った講演「工芸ー新たな価値の創造」では、約80名の人が集まり、京都に文化庁移転に伴い、工芸の政策が模索されるなか、特に第8回世界クラフト会議を中心とした今年度の研究実績を生かして、アメリカでのインタビューなども紹介できた。この講演では強く国立の工芸研究所の設立を提案した。この二つの研究成果は、社会・国民にできるだけわかりやすく説明するという科学研究費の目標も達成できたと考える。また写真付きで京都市、京都府、国指定の伝統工芸品64品を英語で説明した冊子「工芸Arts and Crafts in Kyoto」は日本語ではなく英語で説明できたということが当初目標を上回っており、より多くの人に研究成果を発信することができたと考える
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今後の研究の推進方策 |
今後も、本研究の大きな目的である伝統工芸品の一般的名称(外の言葉)を抽出し、写真つきの辞書を作成することと、伝統工芸の工房内で語られる言葉(内の言葉)を抽出し、その文脈とともに記述し、その言葉の意味を映像でも伝えるデータベースを作成するために、伝統的工芸品指定品目(経済産業大臣指定)が最も多い都道府県である京都(17)、東京(16)、新潟(16)、沖縄(14)をフィールドワークの場所とし、伝統的工芸品の工房を訪問し、職人にインタビュー調査を行い、言語学が伝統工芸という分野にアプローチする方法論の確立を目指す。また29年度の研究成果から、国立の工芸研究所の設立が今後の国策として最も必要だという結果に辿りついた。このことは平成30年3月27日の講演「工芸ー新たな価値の創造」でも主張し、事業報告書として京都市のホームページで掲載されているが、この結果の有効性をより一層明確化し、検証するために、2005年に既に設立されているフランスと台湾の国立の工芸研究所を訪問したいと考えている。その成果を論文としてまとめ、文部科学省、文化庁にも提案したい。
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