本研究は、日本語のテクストを分節、階層化する諸要素の史的展開を明らかにしようとするものである。それを明らかにするために、書写や印刷・出版などテクストの供給と、読書の場、読者層、読み方などテクストの需要との相互影響関係と関連付けて解釈する。そして、新たな書記コミュニケーション史を構築するための一つの視座を提示することを目的とする。本研究で明らかになった成果は以下の通りである。(1)句読点、段落、章節のみならず、文章の表記に使用する文字の使い分けも、テクストの分節と構造化に関与している。読者はこれらの要素によって意味解釈を統御される。(2)一方で、句読法の標準化にテクストの意味解釈が関与している。
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