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2017 年度 実施状況報告書

言語の看取りと看取りの言語

研究課題

研究課題/領域番号 17K18486
研究機関神戸市看護大学

研究代表者

藤代 節  神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (30249940)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2020-03-31
キーワード言語学 / 危機言語 / 看取り / 言語生態 / チュルク諸語 / ドルガン語
研究実績の概要

今年度は初年度であるので、まず、既に消滅に瀕している(看取り段階にある)言語の使用についてパイロット的調査を行うことにした。11月末~12月初めの極短期間ではあったが、ロシア国クラスノヤルスク地方北部のタイムル県ドゥジンカ市内にて、ドルガン語、ネネツ語、エネツ語、ガナサン語話者等に、各言語の使用状況や次世代への言語継承の難しさについて調査を行った。
ソビエト政権下でも、サモエード系のエネツ語、ガナサン語については、既に看取りの段階にあったとも言え、ソビエト連邦崩壊後も依然として話者数は低いままである。一方、チュルク系の言語であるドルガン語の話者の減少は連邦崩壊後のおよそ四半世紀の間に著しい。帝政ロシア時代には比較的産業上も行政上も関係の深かったサハ(ヤクート)語圏とともに、ソビエト政権時代も言語保持率が8割を越えていたドルガン語であるが、ソビエト政権崩壊後の今日、言語保持の状況は衰退の一途であった。今回の調査で、特に伝統産業であるトナカイ飼育の産業形態崩壊による生活様式の変化と集落からの、特に若い世代の人口移動が、筆者の予想以上に言語保持に影響を及ぼしていることが分かった。この調査結果については、ユーラシア言語研究コンソーシアム2017年度年次総会(2018年3月29日、京都)で、「ロシア極北タイムル州の先住民族言語使用状況レポート」として発表した。また、代表者が主に研究対象としているロシア語圏に分布するチュルク系言語の他にスペイン語圏に分布する少数派言語のバスク語や中国語圏に分布する蒙古系小言語についての研究協力者の発表を含め、少数派言語の使用状況について検討する機会を持った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は初年度で、研究開始時期がやや通常の科研課題と比べて遅れたことを年度後半にカバーするまでに届かなかったため。言語の看取りについて、パイロット的な調査は行えたものの、研究報告を文書にまとめるまでは届かなかったため。

今後の研究の推進方策

研究課題の2年目となる2018年度は、引き続き、危機言語の使用状況の調査を進めると同時に、人を看取る、あるいは、看取られる場面での使用言語のあり方についても、視野を広げていきたい。そのため、あらたに研究分担者に英文学者を加え、アジア文化圏と西洋文化圏での看取りの場面での言語行動のあり方を整理していきたい。適宜、看護学分野の研究者にも助言を受けるなど、言語の看取りとともに看取りの言語のあり方についても観察と考察を深めていく。

次年度使用額が生じた理由

言語調査期間が学内業務の都合で短縮せざるを得ず、調査費に残金が生じた。次年度は、分担者も加えて、より対象地域での調査を充実させるために使用し、さらに、冬期には、危機言語話者を招聘し、集中的に言語使用調査も含めて情報収集にあたりたい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Таймырский дом народного творчества(ロシア連邦)

    • 国名
      ロシア連邦
    • 外国機関名
      Таймырский дом народного творчества
  • [国際共同研究] 中国中央民族大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      中国中央民族大学
  • [雑誌論文] A note on r and l in Dolgan and Yakut2018

    • 著者名/発表者名
      Setsu Fujishiro
    • 雑誌名

      Contribution to the Studies of Eurasian Languages

      巻: 20 ページ: 95-103

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A Song of Marriage and Setting up a House. A Proto-Dolgan Song Recorded by K. M. Rychkov,2017

    • 著者名/発表者名
      Setsu Fujishiro
    • 雑誌名

      Essays in the History of Languages and Linguistics, (eds.) M.Nemeth, B. Podolak, M. Urban, Krakow, Poland,

      巻: 0 ページ: 203-217

    • DOI

      doi:12797/9788376388618.11

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] ロシア極北タイムル州の先住民族言語使用状況レポート2018

    • 著者名/発表者名
      藤代 節
    • 学会等名
      2017年度ユーラシア言語研究コンソーシアム年次総会
  • [学会発表] A General Survey of Yakuts/Dolgans and their Language(s)2017

    • 著者名/発表者名
      Setsu Fujishiro
    • 学会等名
      中国中央民族大学 (北京)
    • 招待講演
  • [学会発表] 1世紀前の北方言語資料を如何に利用すべきか―K.M.ルチコフ編纂トゥルハンスク北部域のドルガン語-ロシア語カード辞書をめぐって―2017

    • 著者名/発表者名
      藤代節
    • 学会等名
      中国中央民族大学(北京)
    • 招待講演
  • [学会発表] Андрей Александрович Попов как связь между исследователями предшествующих и текущего веков по долгановедению (A. A. ポポフ-過去と現在を繋ぐドルガン研究の要)2017

    • 著者名/発表者名
      Сэцу Фудзисиро (Setsu Fujishiro)
    • 学会等名
      Междунар. науч.-прак. конф. А. А. Попов - Велк. этно. Сиб. и Сев., посвя. 115-л. со дня его рожд.
    • 国際学会
  • [学会発表] セミナー「フィールド言語学の方法論:ヤクート語/ドルガン語の例」2017

    • 著者名/発表者名
      藤代節
    • 学会等名
      中国中央民族大学, 北京
    • 招待講演
  • [備考] ユーラシア言語研究コンソーシアム

    • URL

      http://el.kobe-ccn.ac.jp/csel/

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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