研究課題
自閉症スペクトラム障害児(ASD)の言語発達の遅れに対処するために、2017年度より、青森中央学院大学地域マネジメント研究所にランゲージ・ラボを設置し、言語セラピーを実施しているが、2018年度も継続し、その記録をデータとして蓄積した。高機能、低機能自閉症児の4-6歳児を対象とし、2018年度の前半まで、個人セラピーをベースに実施した。同年度後半からは、重度の低機能自閉症児を除く自閉症児を対象に、グループ・セラピーを開始した。重度の低機能自閉症児に関しては、グループ・セラピーには不向きと判断し、引き続き個人セラピーを継続した。高機能児に関しては、グループ・セラピーの方が、個人セラピーよりも、グループ・ダイナミクスの働きから、言語発達に効果が見られた。低機能児に関しては、始終、軌道修正を余儀なくされ、グループ・セラピーは極めて難しいが、グループの中に入れることで、行動形態に些少の変化が認められた部分もある。言語発達の鍵は、IQにあることが実感された。重度の低機能自閉症児は、発語がほとんど見られず、発達は停滞状態である。また、2018年12月には、全指導対象児に対して、ADOS(Autism Diagnostic Observation Schedule)を実施し、2017年度のランゲージ・ラボ開始時に実施したADOS結果と比較対照を行った。ADOSのcomparison scoreが平均してワン・ポイント低くなったが(低ければ低いほど定型発達に近づく)、これは言語使用の評定に改善が見られたのが原因で、その他の評価項目に関しては、ほとんど変化が見られない。このことはASDが神経認知障害であることを考えれば当然である。数名(6歳児)が、一定の言語発達レベルに達したため、12月に指導を終結した。
4: 遅れている
言語指導・訓練に関して、試験的プロトコルのアセスメントを適宜行いながら継続しているが、高機能自閉症児に関しては、指導が比較的スムーズに進んでいるが、低機能自閉症児に関しては、発語が見られず、様々な実験的試行錯誤を繰り返しているケースが数件ある。よって、言語指導とその準備で手一杯という状況で、当初の計画では、同時進行でトランスクリプト化とデータ処理を行う計画であったが、実際には手が回らないのが現状である。従って、トランスクリプト化及びデータ処理は、最終年度の前半にセラピーを終結させた時点で、とりかかることになる。また、比較対照データとなる定型発達児の話し言葉のデータも、当初は、言語セラピーと並行して行う予定であったが、最終年度に収集開始とする予定である。
年度前半で、言語セラピーを終結し、蓄積した記録を、次の研究課題とするコーパス構築を視野として、言語セラピーの音声データのトランスクリプト化及びデータ処理にとりかかる。年度後半は、青森中央学院大学付属幼稚園において、定型発達の園児の話し言葉のデータ収集を行う。収集したデータは、セラピーのデータ同様、トランスクリプト化とデータ処理を行うことになる。自閉症スペクトラム障害児と定型発達児のデータ処理が完了した時点で、両グループの比較対照を行い、言語発達について、まとめる。
言語セラピーの準備と、指導結果の査定で手一杯という状況で、当初の計画では、同時進行でデータ処理を行う計画であったが、実際には手が回らず、トランスクリプト化及びデータ処理に関しては全く手つかずになっている。従って、トランスクリプト化・データ処理に費やすことになっていたマンパワーへの謝金は、全く手つかずの状況となった。この作業は、最終年度の前半に、言語セラピーを終結させた時点で、とりかかることになった。また、比較対照データとなる定型発達児の話し言葉のデータも、言語セラピーと並行して行うことになっていたが、最終年度に収集開始とすることになった。収集後、さらにデータのトランスクリプト化とデータ処理の作業に入る。このような事情から、トランスクリプト化及びデータ処理に関するマンパワーへの謝金が、未使用のまま次年度に持ち越すことになった次第である。
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博士論文 青森県立保健大学大学院
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弘前医学
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PLOS ONE
巻: 13 ページ: -
10.1371/journal.pone.0199590
龍谷大学国際社会文化研究所紀要
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青森中央学院大学地域マネジメント研究所研究年報
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