2018年度は、2017年度に行った「文体差のある類義表現に関する認識調査」、「レポートしての作文執筆調査」、「大学教員による添削調査」をもとに、以下の研究・調査を行った。 1 「文体差のある類義表現に関する認識調査」に関し、回答のデータ分析を日本語学習者のレベル別・日本語母語話者別に分析を行った。21語「てる、すごく、どんな、いろいろ、やって、そうだ、って、けど、でも、とか、一番、持って、たくさん、と一緒に、もっと、じゃあ、違って、やっぱり、どっち、あと、でしょう」のうち、母語やレベルを問わず、「一番」「と一緒に」「どんな」が不適切であるという認識が低いことが明らかとなった。 2「レポートしての作文執筆調査」で得られた200編のうち50編を「大学教員による添削調査」として24名に依頼し、その添削状況に関する分析を行った。学術的文章のレジスターとして適切な表現かどうか、教員による判断基準の共通点と相違点に関して分析した。 そのうち、程度副詞「ちょっと」、順接接続詞「だから」、伝聞の助動詞「そうだ」、漢語「全部」、漢語「一番」の類義表現に関し、同一の添削個所に対する添削の違い(許容度)を分析した。その結果、もっとも許容度が高かったのは「そうだ」78.2%であった。続いて「全部(名詞)」68.1%、「一番」54.8%、「それで(順接)」53.6%、「全部(副詞)」43.5%、「ちょっと」37.5%、「だから」30.0%であり、もっとも低かったのは「なので(順接)」8.7%であることから、語句によって許容範囲に大きな揺れがあることが明らかとなった。 3 「文体差のある類義表現に関する認識調査」と 2の結果に関し、ロンドン大学SOASにおいて日本語担当の教員3名と日本語学習者3名を対象に「文体差のある類義表現に関する認識調査」の検証とインタビュー調査を行った。(2019年2月13~15日)
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