研究課題/領域番号 |
17K18495
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
赤間 亮 立命館大学, 文学部, 教授 (70212412)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | くずし字 / 古典籍 / 翻刻支援 / グループ学習 / オンライン研究会 |
研究実績の概要 |
1,立命館ARC古典籍データベースの頁閲覧システムを基盤にした「翻刻本文アーカイブシステム」は、昨年度バージョンアップにより操作性を向上させたが、本年度さらに担当者・注釈・備考欄の改良を行い、さらに編集履歴を残して、完成までの過程を確認できるようにした。 2,翻刻済み本文は、オンデマンドで全文検索可能とし、KWIC表示型で結果を提示できるようにした。また、検索結果は古典籍頁画像ごとにアーカイブされるが、頁替り(頁渡り)の語彙については、分割されているので検索できないという問題点についても解決した。 3,昨年来課題となっていた、翻刻支援システムについては、国文学研究資料館提供の文字画像セットを基本データとしたディープラーニングによる検索エンジンのAPIの提供を凸版印刷から受け、加えて、はこだて未来大学の寺沢憲吾准教授の画像マッチングシステムを取入れた、翻刻支援システムの開発に成功した。 4,橋本雄太氏開発の「みんなで翻刻」システムとの連携と役割分担について打合わせを行い、本システムが教育支援システムとしての性格があり、完全オープンなクラウドソーシング型ではない、グループ型教育プロジェクトに適していることを確認し、双方の手法で完成する翻刻テキストを、将来共有テキストアーカイブとしていくことに合意した。 5,また、上記の翻刻テキストに合せて、翻刻済みのテキストをプレーンテキスト、あるいはPDF化された本文から統合的に検索でき、結果をスニペット表示できる本文検索システムの運用を開始した。 6,古典籍の翻刻システムは、Ver.1の完成後、海外での翻刻研究会、あるいは大学院生に対するワークショップの形で、利用の実証実験を行ない、システムの有効性の検証を行った。ワークショップ実施先は、次の通り。カリフォルニア大学バークレー校東アジア言語学部、シカゴ大学美術史専攻、カフォルスカリ大学日本学専攻。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
翻刻支援システムの実装、統合型テキスト検索システムの運用開始などにより、実証実験が効果的に行えることになった。 ただし、既存翻刻テキストのアーカイブについては、微妙な遅れがあるため、2019年度重点的に進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
1,2019年度は、開発したグループ学習型テキストアーカイブプラットフォーム(Ver.1)に、指導システムを強化し(Ver.2)、さまざまなタイプの実践活用の場(ワークショップ)を設けることで、実用的なプラットフォームに成長させていく。 2,翻刻システムに蓄積される電子テキストと、テキスト統合検索システムの連携システムを開発し、成長するテキストアーカイブシステムを提案する。 3,京都府など自治体との地域連携による地域型資料の翻刻ワークショップ、海外日本学研究者・大学院生に向ワークショップ、立命館大学での授業内活用による実証を行い、システムの実用性をさらに高める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月から3月に海外調査・ワークショップを実施したが、会計事務処理の都合上、次年度での会計処理となったため。また、本研究の根幹システムである翻刻支援システムの検索エンジンの開発が遅れ、7月に開発方針変更、11月にディープラーニングを使った新システムのAPIの提供を受けるという、前年度末に予想していた以上の遅延が発生した。そのため、システムの完成が1月中旬になり、研究活動が2月3月に集中したことが最大の理由であるが、1月から3月での研究活動の進捗は1年間の活動としても十分に評価できるものである。 2019年度は、これまでの遅れを取り戻すことが十分に可能な研究スケジュールを組んでおり、残金を有効に活用した研究活動ができる。
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