研究課題/領域番号 |
17K18502
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
窪薗 晴夫 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・対照研究領域, 教授 (80153328)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 促音 / 日本語 / 音韻論 / 実験音声学 / 日本語教育 / 音楽 / 重子音 |
研究実績の概要 |
促音に関するネットワーク形成のために、まず国内の研究協力者を集めてキックオフワークショップを開催した(2018年3月4日、早稲田大学)。このワークショップでは以下の5件の発表により、日本語の促音を音韻論・音声学(借用語音韻論、実験音韻論)、生理学、日本語教育、音楽の各視点から考察し、今後の研究課題を明らかにした:「借用語音韻論と促音」(窪薗晴夫、国立国語研究所)、「実験音韻論と促音」(川原繁人、慶應義塾大学)、「生理学的手法から見た促音」(松井理直、大阪保健医療大学)、「日本語教育と促音」(戸田貴子、早稲田大学)、「音楽と促音」(坂井康子、甲南女子大学)。 たとえば借用語音韻論の分野では、cap(キャップ)-captain(キャプテン)やfax(ファックス)-facsimile(ファクシミリ)に見られるような位置効果(借用語の語末では促音が生じやすいが、語中では生じにくいという現象)について音韻論と実験音声学の両面から説明がなされている。その一方で、fax(ファックス)やmax(マックス)のような[-ks]では促音が生じやすいのに対し、fact(ファクト)やmask(マスク)などの[-kt], [-sk]では促音が生じにくいという現象があり、これに対する十分な説明がなされていないということが明らかとなった。今後このような研究課題を一つずつ検討していく必要がある。 音楽の分野においても、曲が作られた時代、地域(作曲家の出身地)、歌の種類、促音の種類(摩擦音、閉鎖音)などにより、促音の歌い方にバリエーションが見られることが明らかとなった。今後は、このようなバリエーションをより詳細に分析することにより、促音が日本語の歌においてどのように歌われいるか(歌われてきたか)、日本語の促音とイタリア語などの言語における促音(重子音)の歌われ方にどのような異同が見られるかを明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究費の採否通知が年度途中であったため当初の予定よりスタートが遅れたが、国内の研究協力者を集めてワークショップを開催し、これまでの研究で分かったことと、これから明らかにすべき課題を明らかにすることができた。今後、さらに研究分野を広げるとともに、海外の研究者にも研究の輪を広げて、促音(重子音)が持つ様々な特性を明らかにしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに国内ネットワークを強化し、言語学以外の分野(日本語教育、発達心理学、音楽等)へネットワークを広げて行く計画である。また国外の研究者との協同を図るために、国際シンポジウムを開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付決定が当初予想していた時期より遅かったことや、交付後数カ月の間、他の業務に忙殺されたため、初年度に予定していた国際集会を開催することができなかった。平成30年度にこの国際集会を開催する予定である。
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