研究分担者 |
小田 寛貴 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (30293690)
長柄 毅一 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (60443420)
清水 康二 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 指導研究員 (90250381)
菅頭 明日香 青山学院大学, 文学部, 准教授 (90554072)
|
研究実績の概要 |
青銅資料には微弱な残留磁化を有するものがあるとわかり,年代・製造状況の研究での磁化利用の有用性を調べた.実験鋳造の青銅片では,銅・錫の反磁性が負の帯磁率で検証され,更に微量の強磁性粒子の残留磁化を認め,青銅の特異な磁性を確認した.静岡県袋井市の梵鐘(平治二年銘)では,複数の破片の安定な磁化から破片復元時の伏角を求めて地磁気永年変化と照合すると銘より若い年代と対応し,本鐘の再鋳造(時期)を示すと考えられた.岐阜県可児市の久々利銅鐸等でも破片の安定磁化が得られ,鋳造過程の研究が可能となった.長柄は,同銅鐸の3D計測によりポリゴンデータを求め,シミュレーションから注湯法案を検討し,湯流れや凝固の状態を考察した. 鋳造銭貨の鋳型と中国山東省出土の鏡面笵資料の研究では,湯通しで獲得された熱残留磁化を用いる鋳型の利用・年代の研究が可能とわかった.銭貨では青銅片と同様,湯が固まる際に生じる帯磁率異方性が今後,湯通し状況等の検討に利用できる.また磁化研究と蛍光X線分析の併用が偽銭の判別に有用と判明した. 小田は,青銅緑青の14C年代研究を行い,緑青を真空中で加熱調製する際,250℃では確度の高い年代が得られるが,より高温では,温度上昇に伴い古い年代値に傾くことを認めた.清水は,三角縁神獣鏡の製作技術を検討した.同鋳型で作られた「同笵鏡」が他の鏡種に比べて圧倒的に多数見つかっており,青銅鏡鋳造技術の復元,検証にも最適の考古資料である.文献史学的にも『魏志倭人伝』に記載された魏の皇帝が卑弥呼に贈った「銅鏡百枚」に比定する見解がある.歴史上重要な銅鏡に関して,湯口方向を資料観察で決定できる資料とできない資料を見極め,科学分析とは別に考古学的な判断を行った.
|