研究課題/領域番号 |
17K18511
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲村 達也 京都大学, 農学研究科, 教授 (00263129)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 初期水田稲作 / 考古学 / 出土米 / 水管理 |
研究実績の概要 |
日本に水田稲作が導入された当初の弥生時代前期から古墳時代における水田でのイネの実収量を推定するために不可欠な、水田における実際の湛水状態の変遷を明らかにするために次の研究を実施した。 ① 4水準の湛水条件(常時湛水、栄養成長期のみ湛水、生殖成長期のみ湛水、常時非湛水)において、カドミウム、ヒ素および窒素濃度の異なる2水準の土壌(弥生前期水田土壌と現代の水田土壌)を用い、弥生時代前期に渡来したと推定される遺伝的背景を持つイネを栽培し、3次元形状と元素組成(Cd、As、Cd/As比)の分析用標準試料を作成した。② ①で作成したイネの穂の3次元形状をSPring-8(兵庫県佐用郡佐用町)においてX線CT法により測定した。③ ①で作成した植物試料と栽培土壌の元素組成(CdとAs)を京都大学原子炉実験所(大阪府泉南郡熊取町)においてICP-MSにより測定し、湛水・土壌条件と元素組成との関係から湛水状態を推定する手法を明らかにした。④ 弥生時代前期水田(秋津遺跡・中西遺跡)の微地形(高低差など)や水利施設の配置と、先行研究で得られた水田群での湛水状態の水田間変動との関係を地図化し、弥生時代前期における水田群における潜在的な湛水状態を推定した。⑥ 福岡、鳥取、徳島、奈良、群馬、山形県などで検出された弥生時代から古墳時代の出土米ブロックのX線CT計測を実施した。⑦得られた成果の一部を、飛鳥史学文学講座(明日香村、関西大学)において講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本に水田稲作が導入された当初の弥生時代前期から古墳時代における水田における実際の湛水状態の変遷を明らかにするために必要な農学的・考古学的データを網羅的に得ることができた。また、成果の一部を公表できた。
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今後の研究の推進方策 |
農学的・考古学的データの取得を継続し、日本に水田稲作が導入された当初の弥生時代前期から古墳時代における水田における実際の湛水状態の変遷を明らかにする。そして、成果を広く公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
供試予定であった弥生時代から古墳時代をカバーする日本各地の遺構から出土した出土米ブロックの一部を供試することができなかった。翌年度はこれらの出土米ブロックを含め計測を実施し、供試予定のすべての出土米ブロックを対象にデータの解析を実施する。
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