研究課題/領域番号 |
17K18513
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 教授 (00253807)
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研究分担者 |
中村 俊夫 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 招へい教員 (10135387)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | プラント・オパール / 年代測定 / 生産遺構 / 加速器質量分析法 / 微細繊維 |
研究実績の概要 |
本研究は、水田や畑(畠)といった生産遺構の探査に利用されてきたプラント・オパール(イネ科植物の細胞化石)の表面に残留する有機質繊維から、遺構の年代を測定(加速器質量分析法による14C年代測定)する技術の開発を目的としている。本研究では、探査に利用される被検出率・量を備えたプラント・オパールを利用することにより、従来の「生産遺構の年代決定方法の限界」を突破した新しい測定技術の確立を目指す。具体的には、次の2つの取組を行い、新しい年代決定技術の開発を進める。 ①時代や堆積環境の異なる国内の生産遺構土壌からイネのプラント・オパールを数百万個の単位で抽出し、その表面の有機繊維質から得られる炭素から14C年代測定を行い、測定の可否ならびに限界を明らかにする。②プラント・オパールを抽出する土壌の採取方法やイネプラント・オパールの純度による年代測定値のばらつき(精度)を明らかにする。 平成29年度は計画初年度であることから、研究代表者の下に確保されている既に年代が明らかな弥生時代から中世の稲作遺跡の水田土壌を供試して、「測定の可否と限界」を中心に検討を進めた。供試した土壌は、異なる堆積環境(谷底低地、自然堤防、三角州、扇状地)下のものである。 検討の結果、筆者らが構築した抽出手法により、すべての土壌について、抽出されたプラント・オパールから年代測定に必要な炭素を確保することができた。また、年代測定の結果は、年代値が想定年代よりやや古い値となったが、おおむね調和的な年代値が得られた。以上の結果から、プラント・オパール表面に残留する繊維を利用することで、安定して年代測定を実施することが可能であることが明らかとなった。なお、精度については、今後、抽出プラント・オパールのイネの純度などの比較による検討を進める必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
筆者らが構築して試行した土壌からのプラント・オパール抽出方法により得られたプラント・オパールを年代測定に供試することで、土壌の違いにかかわらず、必要なプラント・オパールならびに年代測定に必要な炭素量を確保することが可能であるという見通しを得ることができた。この結果から、当初の計画で想定したような抽出方法についての改善は必要なく、今後は、主に測定精度の検討に集中することが可能となった。また、新しい測定試料についても宮崎県の遺跡で良好な比較試料を採取・確保することができた。 以上の進捗状況から、計画以上に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の取り組みの結果、プラント・オパールの抽出方法ならびに得られたプラント・オパールによる年代測定が安定して実施できる見込みを得ることができた。そこで、今後は、抽出したプラント・オパールの組成(イネプラント・オパールの純度を含む)ならびに抽出工程における比重分画区分が年代測定結果に与える影響を中心に検討を進める予定である。この検討により、本研究が構築を目指す年代測定方法の精度ならびに実用的に使用できる運用事例を明らかにしたい。また、抽出方法の実用性をさらに検討するため、新たな生産遺構土壌を供試試料として追加し、プラント・オパールの抽出と年代測定も予算的に可能な範囲で進めてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想以上に、順調にプラント・オパールの抽出ならびに測定が実施できたため、研究打ち合わせの回数が1回で十分となった。また、分析試料の採取・確保についても研究代表者の研究機関が所在する宮崎県で実施できた。以上のことから、想定した旅費支出が抑えられた結果、次年度使用が生じた。この予算については、次年度の測定精度の検討における比較測定試料数の追加に充て、検討内容の一層の充実を図る。
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