研究課題/領域番号 |
17K18524
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
青木 久 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (30423742)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 波食棚 / 海崖 / 波食作用 / 風化作用 / 野外実験 / 野外観測 / 石垣 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,波食棚形成の主要因が何かを定量的に明らかにすることである.本年度は,千葉県銚子半島海鹿島海岸と神奈川県三浦半島荒崎海岸において野外調査が実施された. 海鹿島海岸では汀線付近に築造された砂岩塊からなる石垣を人工の海崖とみなし,その侵食状況を(初期条件をコントロールした)野外実験の結果であると考え,砂浜のある場所,波食棚がある場所とない場所という極端に地形場の異なる石垣を対象として石垣の侵食量(後退量)に関する調査を実施した.石垣の侵食量の計測結果と石垣表面の観察結果から,石垣の後退プロセスについて推察した.前面に波食棚がない石垣と,砂浜や波食棚がある石垣の侵食量を比較した結果,波食棚のない石垣よりも砂浜や波食棚が存在する石垣の侵食量のほうが大きいことがわかった.石垣表面の風化生成物の有無と潮位変化に伴う石垣の露出程度の観察により,各地点の石垣の後退プロセスを比較検討した結果,砂浜や波食棚のある石垣では,波食棚のない石垣よりも塩類風化作用が起こりやすい環境であり,塩類風化が介在する侵食プロセスが卓越することが推察された. 荒崎海岸では,急傾斜した泥岩と凝灰岩の互層からなる波食棚の形成高度について,風化節理(割れ目)を考慮した岩盤の抵抗性という観点から調査を実施した.波食棚表面の洗濯板状起伏は,P波速度を用いた割れ目指数とシュミットハンマーの反発強度を組み合わせたパラメータを採用することにより,定量的に説明できることがわかった.互層からなる波食棚の形成高度の違いは泥岩層に含まれる凝灰岩層の密度に関係することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の最重要の位置づけにある石垣における調査を開始することができた.石垣を含めた海岸の地形測量と石垣の侵食量の把握を行い,基本的なデータを得ることができた.とくに波食棚の有無による石垣の侵食量の差異は,新知見につながる成果である.さらに計測サイトを設け,含水比の計測,侵食量の計測を行う準備が完了した.以上の点を考慮し「おおむね順調に進展している」と判断した.2018年度は,データを定期的に収集し,解析を行いながら,研究内容を深めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
【海崖の後退プロセス】波食棚の形成に伴う海崖の後退に風化が関係するのかどうかという問題について検討するため,千葉県銚子半島海鹿島海岸における調査を継続して行う.【波食棚の変形プロセス】波食棚の変形に風化が関係するのかどうかという問題については,様々な地域(静岡県,千葉県,宮崎県,沖縄県)に発達する波食棚を対象とした調査を行う予定としている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は岩石表面の風化強度の測定を行わず,強度試験機の購入をしなかったため,次年度使用額が生じた.次年度に風化岩石の物性計測を行う方針であり,ポータブル試験装置の購入に充てるつもりである.
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