宮崎県青島海岸において70年前に竣工された弥生橋は砂岩塊を積み上げた橋脚に支えられている.最終年度は,その橋脚を人工の海崖とみなした野外調査を実施した.(1)砂岩塊の侵食は潮間帯ではほとんど起こらず,その上方の海水飛沫帯で激しく発生し,崖(橋脚側面)全体が波食ノッチ状の断面を示すこと,(2)崖の平均後退速度は従来報告されている波食棚海岸での崖の後退速度と整合したことから,弥生橋橋脚では波食棚が生成される現象(初期形成)が起こっていると解釈できた. さらに風化環境が極端に異なる,豊富な日射を受ける南面とほとんど日射を受けない北面を対象にし,崖(砂岩塊)表面でのシュミットハンマー計測を行い,岩石強度の低下の観点から波食棚の生成に与える風化の影響を考察した.(3)南面では北面よりも低強度の砂岩塊が数多く存在し,その表面強度は北面よりも大きく低下していたこと,(4)南面の波食棚は北面よりも低い位置に形成されていたことなどから,風化環境が波食棚の生成高度に影響を与えることが示唆された. また,これまでに得られた野外計測データを用いて,野外波食棚の形成高度について分析した結果,波食棚の前面水深に対する高度(z/h)は,室内実験による先行研究の結果と同様,ρgH*/Scを用いて統一的に説明できることがわかった.ここにzは波食棚の形成高度,hは波食棚の前面水深,H*は襲来する崖前面での波の波高,Scは岩石表面の一軸圧縮強度,ρは水の密度,gは重力加速度である.
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