研究課題/領域番号 |
17K18525
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 伸幸 名古屋大学, 人文学研究科, 助教 (40273205)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 文化人類学 / エルサルバドル / チャルチュアパ / ピピル / ナワ語 / DNA分析 / 集団遺伝学 / グァテマラ |
研究実績の概要 |
1.物質文化に関する比較研究 今年度は、メソアメリカ南東部からメキシコ湾岸やメキシコ中央部における太鼓腹の石彫を対象として、メキシコ中央部において資料を収集した。動きやすい遺物を研究するために、蛍光X線分析に関する基本データを得るために、エルサルバドル遺産局の許可を得て、エルサルバドル国内から出土した緑色の石(ヒスイ、トルコ石、蛇紋岩他)から作られた遺物の写真を撮影し、エルサルバドル国内の緑色の石製品のデータベースを作成するための資料を得ることができた。 2.DNA 分析によるヒトの集団遺伝学的研究 現代のエルサルバドル人のDNA試料(頬粘膜試料)をJuan Carlos Monterrosa(エルサルバドル最高裁DNA研究所)氏の協力を得て、また、先住民(ピピル族)であると自己申告した試料提供可能な人物から3つの集落でのDNA分析用試料(頬粘膜試料)を文化人類学者Jorge Lemus(ドン・ボスコ大学)氏の協力を得て、インフォームド・コンセントをとり、採取した。それらの全ての試料について、採取地、性別、年齢以外の個人情報を除き、非連結匿名化した試料を搬送し、DNAを抽出後、法科学分野で一般的に個人識別用使用される常染色体上の15座位のSTRs (short tandem repeats)を解析し、エルサルバドルにおけるデータベースを作成した。また、公表されている世界中のデータベースのデータと併せて集団遺伝学的解析を行った。その結果、先住民ピピルは、メキシコ南部の同じナワ語系先住民と遺伝的に近縁であることが示唆された。そのため、地理的に両者の間に分布するグァテマラ共和国の先住民との関係を知る必要性が生じたので、グァテマラ共和国の法医学研究所と連絡を取り、DNA分析用試料の提供を打診した。また、同研究所が行ったDNA分析結果に関する情報提供についての意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.物質文化に関する比較研究 動きにくい遺物である石彫の調査を継続した。ベラクルス大学で、太鼓腹の石彫の写真を撮ると共に必要な情報も収集した。また、携行型蛍光X線分析器による分析を円滑に進めるために、エルサルバドル国立人類学博物館で緑色の石の石製品の分析を始めた。年度ごとの当初の計画は少し異なるが、3年計画内の調査と研究は順調に進んでいる。 2.DNA 分析によるヒトの集団遺伝学的研究 先住民ピピルなどのSTR解析から、その遺伝的な出自に関する新たな結果が得られたので、メキシコ南部とエルサルバドルを繋ぐDNA分析試料若しくはデータを得るために、グァテマラの法医学研究所との連携を考慮した。このために、グァテマラにおいて同研究所との協力を模索した。その結果、将来的な協力が得られる可能性が見いだされたので、今後、有効に時間を使って当初の計画に支障をきたさないように、グァテマラでの先住民を対象とした研究への発展も考慮している。以上の理由で、当初計画とは少し異なるが、おおむね順調に計画は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.エル・トラピチェ地区出土石彫とエルサルバドル出土石彫を、より北のメソアメリカ諸地方や南の中間地域の諸文化でみられる石彫と比較する。このため、今までメキシコ、グァテマラなどで収集した基本資料から、石彫にみられる特徴を分析する。一方、蛍光X線分析により産地同定を実施し、持ち運びやすい遺物の交易ルートを解明する。そして、主に運びやすい石製品にみられる短期の文化の変化と記念碑的な石彫にみられる長期の文化の変化を分析し、メソアメリカ辺境部における文化交流の実体を解明する。最後に、物質文化の移動史を再構築する。 2.エルサルバドルの先住民ピピル族の集落で、インフォームド・コンセントをとり、男性のDNA試料(頬粘膜試料)を現地研究協力者により追加採取する。これらを非連結匿名化した後、抽出DNA試料として、また、既収集DNA試料のうち男性のDNA試料について、また、法科学分野で使用されるY染色体上の17座位のSTRsを解析し、エルサルバドルにおけるデータベースを作成する。また、公表されている世界中のデータベースのデータと併せて集団遺伝学的解析を行う。そして、エルサルバドル周辺諸国、特に、メキシコ南部とをつなぐ、グァテマラ共和国における先住民のDNA試料採取あるいは既存データの取得を模索し、法科学分野での常染色体上の15座位のSTRs及び17座位のY-STRsによる集団遺伝学的解析を行う。最終的に、DNA 分析の成果を基にして、先住民の遺伝的な特質を明らかにする。 3.メソアメリカ辺境部における交差点の役割を解明する研究 物質文化に関する比較研究を基にして、DNA分析による人類の遺伝学的特質をその起源ごとに分けて分布図を作成する。さらに、物質文化の歴史的な起源を明らかにして、DNA分析による遺伝形質の起源分布図を、時期毎に分けて、歴史的な物もしくは人の移動を明らかにする。
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