研究課題
挑戦的研究(萌芽)
濃尾平野西縁の養老山地東端に発達する扇状地末端付近の沖積層に着目し,完新世の土石流に関する評価を試みた.小倉谷,盤若谷および徳田谷の扇状地末端およびその周辺の沖積低地において合計4本のオールコアボーリングを実施し,コア堆積物の解析をおこなった.徳田谷および盤若谷で採取したコア堆積物中には,洪水や土石流によって堆積したと考えられる数枚の礫層が確認された.また,有機物や貝殻片の放射性炭素年代測定により,礫層の堆積時期を推定することができた.
地理学
豪雨や地震が多発し,山地の多い日本は土石流による物的・人的被害を頻繁に受けてきたが,過去の土石流については発生時期や頻度,規模など不明な点が多い.本研究によって,洪水や土石流によって堆積したと考えられる礫層が確認され,その堆積時期を推定できたことにより,過去の洪水や土石流に関する理解が進むと考えられる.また,研究成果は,山地と低地の境界付近に分布する扇状地の形成過程,とくに扇状地の海水準変動や気候変動に対する応答,の解明にも貢献するものである.