研究課題/領域番号 |
17K18545
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
久保山 力也 大分工業高等専門学校, 一般科文系, 講師 (00409723)
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研究分担者 |
山本 哲史 名古屋大学, 法学研究科, 特任講師 (20506737) [辞退]
砂原 美佳 名古屋大学, 法学研究科, その他 (30467261) [辞退]
杉田 昌平 名古屋大学, 法学研究科, 研究員 (30791975)
松尾 弘 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (50229431)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 法の教育 / 外国人技能実習生制度 / ゲーミング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「これから日本社会にコミットするか、日本社会の経験が浅い外国人に対し、法の教育プログラムならびに教材を作成すること」にあり、特に外国人労働者の大幅な受け入れを予定する日本社会の現状に照らし極めて意義深く、重要度の高い研究と思慮する。計画では文献調査、実態調査、国際学会報告を予定していた。以下に実績の概要を述べる。 ①研究期間中、これまでに、久保山力也(2017)「対話する法と教育」『法教育研究』(12-2)韓国法と教育学会(同学会学会賞受賞)、久保山力也(2018)「ゲームで学ぶ法教育」『裁判員時代の法リテラシー』日本評論社などにて研究成果を明らかにした。②実態調査については、モンゴル、カンボジア、ウズベキスタンにてヒアリングを実施し、外国人留学生が日本社会ないし日本法を学習する際の困難や、日本留学ないし短期滞在経験における日本人や会社等との紛争経験などに関する事例を収集した。たとえばカンボジアでは技能実習生の送り出し機関である「アクセルアジアヒューマンリソーシズ」ならびに「プロキャストカンボジア」において調査を実施し、CJLカンボジアセンター(名古屋大学)にて関連特別講義を実施した。日本ではJITCO(公益財団法人国際研修協力機構)にて技能実習生についてのヒアリングを行った。③教材開発については、日本司法書士会連合会と協働しながら、法教育教材『相談のちから』『提案のちからⅠ』『提案のちからⅡ』の製作を行った。また現在、実態調査を元に労働問題に関する新規教材を作成中である。これらの教材には、本研究課題である「架橋型」コンセプトが組み込まれている。④架橋型法の教育の理念と方法論について、アジア法社会学会2017(台湾大会・2017年12月台湾交通大学)ならびに同学会2018(オーストラリア大会・2018年12月ボンド大学)にて、代表者および分担者が報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調と判断した。以下に【調査部門】、【開発部門】、【分析部門】、【公開部門】にわけその理由を述べる。 ①【調査部門】については、海外調査、国内調査ともおおむね順調に進展した。前者については代表者・分担者・協力者間で担当国を割り振り、モンゴル、カンボジア、ウズベキスタンについて一定の成果を得た。特にカンボジアにおいて調査票調査、ヒアリング、関連講義、外国人技能実習生送り出し機関訪問など総合的な調査が実施できた点は評価に値すると考えている。②【開発部門】については、教材開発の方法などについて定期的に会議を持ち、十分検討をはかってきた。外国人に直観的かつ簡便に取り組んでいただけるよう、ゲーミングの手法を取り入れた教材を開発している。③【分析部門】については、上記モンゴル、カンボジア、ウズベキスタンにおける調査や国内機関等に対するヒアリング結果を踏まえ、教材化のための基礎資料を構築できた。④【公開部門】については、上記「研究実績の概要」に明らかにしたように、論文や国際学会における報告という形で成果を公表できた点がよかったと考える。 本研究では、日本社会と海外(外国人)をつなぐ法の教育を可視化するという挑戦的な課題を掲げており最終的には教材化を行う。このため上で述べたような4つの部門をバランスよく推進させることが重要であると考えている。また、研究者間の意思疎通、連絡体制は良好で、相互に情報交換しつつ研究が進められている点も強調しておきたい。一方、こうした特徴から日本社会の動きにはとくに注視する必要があり、第197回国会において外国人労働者の受け入れ大幅増の決定がなされたことから、これに応じた対応をすべきということになり、研究期間の延長をはかることになった。十分、最終的な成果に反映させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について、以下に【調査部門】、【開発部門】、【分析部門】、【公開部門】にわけ述べる。 ①【調査部門】については、引き続きニーズと教材作成上の留意点を探るため、海外拠点におけるヒアリング等調査を進めていきたい。また、JICAなど国内における関連機関の状況やそれら機関が作成した資料・教材等も十分調査したいと考えている。とくに先行するJITCO作成の教材や、韓国・法教育支援センター開発教材について十分吟味し、研究開発に取り入れていく。②【開発部門】については、状況の変化をとらえつつ直観的かつ簡便なゲーミング教材の開発を引き続き行う。③【分析部門】については、これまでに得られたヒアリングデータなどをまとめ教材開発に生かしつつ、分析結果を明らかにしたい。④【公開部門】については、2019年6月に九州大学にて開催される日本公民教育学会、11月の全国社会科教育学会(島根大学)、12月のアジア法社会学会(大阪大学)にてその成果を明らかにする。 以上、研究者間の連携をさらに密にし、十分な成果構築をはかっていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題については、社会・政治環境の変化に対応するため、協議の上1年の延長申請を申請し、結果認められた。延長年度について、成果公開のための費用とすべく研究努力により一定の金額を次年度使用額を確保しようとしたものであり、よって当該目的のため使用されることになる。
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