本研究は、政治史を中心に、建築史・都市史を統合した学際的アプローチを採用し、議会政治の中核をなす議事堂、すなわち議場及び関連する政党・議員控室、事務局を含む政治空間の、意匠や配室を介した政治の動態との連関の様態を、他の議事堂との比較を通じて解明するものである。 本年度は昨年度、海外での研究報告や資料調査が実施できなかったことから延長したものであったが、COVID-19の蔓延継続によりやはり海外・地方での研究調査を行うことは叶わなかった。このため、研究報告についてはオンラインに移行した海外の研究会をなるべく利用し、また資料調査は国内での文献調査を重点的に行うことで可能な限り補うことを試みた。とりわけ昨年度の研究調査を通して、議事堂の周辺空間の重要性が明らかになったため、衆議院議員の具体的な生活空間について『国会便覧』の調査・研究を進めた。 具体的な公開成果としては、三回にわたって海外のオンライン学会・研究会で報告を行った。さらに、こうした場で得たフィードバックを反映して、英語圏を中心とした世界の議事堂研究を紹介した文献レヴュー(「議事堂研究の諸潮流」『法学会雑誌』62巻2号)を刊行した。①議事堂比較、②制度と空間配置、③象徴と意匠、④儀式と儀礼とに腑分けした鳥瞰は、海外の研究グループもほぼ交わることなく島宇宙化していることを鑑みれば、世界的にも画期的であり、また今後の議事堂研究に裨益するところ大だと考えている。 なお、研究期間中にすでに公刊した業績を前提として、日本の議事堂に関する業績を取りまとめる予定である。
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