研究課題/領域番号 |
17K18559
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
岡本 亮介 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (60323945)
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研究分担者 |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10377137)
細江 宣裕 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (60313483)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 電力 / 送電線設備容量 / 市場支配力 |
研究実績の概要 |
自由化された電力産業における独立した送電設備計画機関は、送電線容量の決定を通じて、間接的にのみ市場均衡に影響を与えうる。この状況は二段階計画問題として捉えることができる。すなわち、一段階目で送電設備計画機関が送電線容量を決定し、二段階目で火力や再エネの発電事業者が意思決定を行い、電力市場のオペレーションも行われる。この問題を「均衡制約をもつ数理計画問題」として定式化し、解析的に解くことを試みた。特に、市場競争の度合いと送電設備形成の相互作用、そして環境政策の度合い(強度)が送電設備形成に与える影響に焦点を当てて分析した。 2つの地域(北部に再エネ、南部に火力が立地)と地域間を結ぶ基幹送電線がある簡単なケースを検討した結果、環境政策が不完備だが市場は完全競争である場合において、送電設備計画機関が選択する送電線容量はファーストベストに比べて小さくなる。ファーストベストの送電線容量から乖離が生じるのは、火力発電の外部不経済効果が内部化されないことによる歪みのためである。環境政策が不完備で、市場が寡占による不完全競争である場合にもファーストベストの送電線容量からの乖離が生じる。さらに、環境政策の例として炭素税を導入するケースも分析した。炭素税が完備されると、完全競争下では最適な送電線容量が実現し社会厚生も最大化されるが、不完全競争下ではそうなるとは限らない。不完全競争のもとで「市場支配力の影響」が「環境負荷の影響」よりも大きい場合には、炭素税の導入により、送電容量が増大するが、市場支配力が強まり結果として社会厚生が低下することがおこりうることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画している理論分析は2件の国際学会における口頭報告を行うなど、初年度から一定の進捗を見せている。データ分析についても想定した期間のデータ収集は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
学会報告を行った理論分析については、今後は、学術雑誌において原著論文として刊行することを目指す。データ分析については、入札データの整理が終わり次第、統計的処理を行ない、論文にすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた電力の現地調査や学会出席が、スケジュールの都合上すべてを行うことができなかった。繰越した研究費を使って、次年度において、カバーできなかったものを実施することとしたい。
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