本年度は最終年度であったことから、これまでに実施した調査に基づく分析を行いその結果を、査読論文やディスカッションペーパーの形で、日本語だけでなく英語でも公表した。さらに、新たに2つの調査を行って、その成果を公表した。 本年度に実施した第1の調査は、2019年4月に実施した「高齢者向けの金融サービスの利用状況に関する調査」である。これは、家森信善・上山仁恵・柳原光芳「高齢者の金融リテラシー計測の試み」(RIEB DP2018-J06 2018年)において、貯蓄や生活設計の面での行動と数々の金融リテラシーの尺度との関係を調べる調査を行ったことを受けて、高齢者のポートフォリオ選択面の行動と、数々の金融リテラシーの尺度との関係を調べた。これについては、家森信善・荒木千秋・上山仁恵「高齢者の金融リテラシーと資産運用」(RIEB DP2019-J09 2019年11月)の形で公表した。 第2の調査は、2019年7月に実施した「住宅ローン利用者の借入行動と金融リテラシーに関する調査」である。この調査では、望ましい金融行動と金融リテラシー(および、新たに採用したデットリテラシー)の尺度との関係を分析することを目指した。これについては、家森信善・上山仁恵「金融リテラシーと借り入れ行動」(RIEB DP2020-J01 2020年)として公表した。 最終年度であることから、これまでの研究活動のアウトリーチ活動にも注力した。具体的には、2019年10月に、日本FP協会兵庫支部や近畿財務局の協力を得て、公開シンポジウム「高齢社会の金融のあり方を考える―人生100年時代のファイナンシャル・プラニング―」を開催した(約200名の参加)。そのシンポジウムの成果をまとめて、2020年3月には、家森信善編著『人生100年時代の金融リテラシーと金融サービス』(経済経営研究叢書・金融研究シリーズ)を公表した。
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