本年度は、日本における一般廃棄物の広域処理政策に着目し、広域処理政策がもたらす規模の経済性や範囲の経済性が廃棄物処理費用にどのような影響を与えるのかについて、計量経済学的手法を用いて実証的に明らかにする。これを通じて廃棄物処理の広域処理政策がもつ費用効率性を把握し、効果的な政策を実施するための条件について考察することが本研究の目的である。また規模の経済性や、範囲の経済性を踏まえた広域処理政策の費用効率性に関する本研究の結果は、今後の新興国や発展途上国において効率的な廃棄物処理政策を検討するうえで有益な視点を提供するだけではなく、減量化やリサイクルが進んでいる先進国を中心とした国や地域に対しても、廃棄物処理の効率化に向けた政策のあり方に関する有益な視点を提供することができる。計量経済分析の結果、広域処理を実施している自治体ほど1tあたりの処理費用が約21%低い傾向にあることが明らかになった。また、人口規模が第1四分位群の広域処理を実施している自治体は、単独処理をおこなっている同規模の自治体よりも処理費用が約32%低いことが明らかになった。これは規模の経済性によって人口規模や排出規模が小さい自治体ほど、廃棄物処理の広域化が処理費用の削減に効果的であることがを示している。さらに本研究では、複数の処理過程で広域処理を実施している自治体ほど、処理費用が約25%低い傾向にあることが明らかになり、範囲の経済性が処理費用の削減に寄与していることが示された。
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