イワシ漁業に見る社会－生態システムのレジリエンス

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 17K18576
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 宮内 泰介 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50222328)
• 研究分担者: 藤林 泰 大阪経済法科大学, アジア太平洋研究センター, 教授 (80292639) ; 金城 達也 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員 (90760398)
• 研究期間 (年度): 2017-06-30 – 2020-03-31
• キーワード: 環境史 / 環境社会学 / 水産業 / 煮干し

研究実績の概要

本研究は、千葉県、瀬戸内海、愛媛県南予地区、長崎県の4つの地域におけるイワシ漁業の100年について、現地調査と資料収集・レビューによってデータ蓄積し、そこからイワシ漁業の変動や持続性に影響を及ぼしている諸ファクターを抽出し、そのことによって社会－生態システムのレジリエンス・モデルを作ることを目的としている。
2017年度は、まず7月に全体会合を持って全体のフレームワークと調査計画について議論した。そのあと、8月に長崎県佐世保市、10月に山口県周防大島（含む浮島）、1月に香川県伊吹島および愛媛県宇和島市、さらに2月に山口県周防大島（含む浮島）および広島県阿多田島の現地調査を敢行した。現地調査のほとんどは研究代表者と分担者の全員で行った。
並行して、文献・史資料を収集して読み込み、さらに統計を集めた。文献・史資料と統計はクラウドのスプレッドシートに入力していき、主に明治以降の各地のイワシ産業（イワシ漁・イワシ加工業および流通）の流れを全体として把握できるようにつとめた。
現地調査や資料からは、以下のような多くの注目点が浮かび上がってきた。（a）漁業と加工との社会的関係とその変化、（b）漁場ルールの多様性とその変化、（c）個別流通から共販への流れ、（d）漁法の変化、（e）加工技術の変化、（f）イワシ産業の働き手の変化、（g）イワシ漁と他の漁業、イワシ産業と他の産業の組み合わせとその変化、（h）地域によるイワシ産業盛衰の顕著な差、（i）イワシ加工形態・利用形態の変化。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ほぼ予定通りに順調に進んでいる。本研究では現地調査と資料収集が軸になるが、本年度は4回の共同調査を行った。現地の漁協・漁業者・加工業者の協力が得られ、充実した調査を行うことができた。調査は主に聞き取り調査によるが、その聞き取り内容を文字起こしする作業も進んでいる（ただし年度内にすべての文字起こしは終わらなかった）。資料収集・統計収集は、研究代表者と2人の分担者の間でうまく連携がとれ、それぞれに進められた。それをすべてPDFによって共有し、さらにそれを分担して分析する作業が進められた。メーリングリストでの情報共有や意見交換は頻繁に行われている。研究はおおむね順調に進んでいると言ってよい。

今後の研究の推進方策

今後は、現地調査と資料収集を続ける。対象地区のうち、千葉県の調査が遅れているので、それを行うとともに、瀬戸内海、愛媛県南予地区、長崎県についても、ひきつづき、現地調査を続ける。これまでの調査でおよそ調査対象者および調査項目が絞れてきたので、それを効率よく行っていく。並行して、すでに収集した資料や統計を入力・分析していく作業を今後は本格化させる。適宜研究支援員を雇用してその作業を進めていく。
また、ある程度分析が進んだら、積極的に学会発表および論文執筆を進めていくつもりである。

次年度使用額が生じた理由

調査研究についてはほぼ予定通り進んだが、予定していた研究ミーティングの1回ができなかったこと（その代わり、現地調査のさいに現地で行った）、また、研究支援者によるデータ入力を予定していたのができなかったことから、次年度使用額が生じた。翌年度は、翌年度分として請求した助成金と合わせ、現地調査とともに研究ミーティングをより充実させ、さらに研究支援者によるデータ入力を進める予定である。